2010年(平成23年)2月10日号

No.494

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山と私

(71) 国分 リン

― 久しぶりの雪山「北横岳・三ツ岳」 ―  

 12本爪アイゼンが岩に食い込み、カリカリと音がする。胸の動悸が治まらず、深呼吸をして三ツ岳(2360m)の頂上に立った。

 雪山へ登りたくなり、スポニチ登山学校の片平先生へお願いしたら、「毎年足慣らしに八が岳の北横から三ツ岳に登っているから、一緒に行きますか」の返事に喜んだ。スキーシーズンに毎年お世話になる長野県富士見のF氏宅へ連絡を取り、今回もお世話になる。古民家造りで、薪ストーブの灯りは暖かく、心が和む。静かな夜に「雪が降り出したよ」と教えられ窓を開けると一面真っ白に雪化粧、朝の積雪量を心配しながら休む。朝の窓越しの見事な日の出に感激しながら起き、5cm程の雪に安心し、F氏に車で1時間の距離をピラタス蓼科ロープウェイまで送っていただき、深く感謝した。昨日見えなかった八ヶ岳全貌が見え、空は雲ひとつ無い青空が拡がっていた。ロープウェイ乗り場はスキー客と登山客が半々ぐらいで乗り込み、標高差500mを10分ほどで山頂駅(2230m)到着。さすがに寒く身が引き締まる。この坪庭付近は夏、高山植物の宝庫で、ハイマツ帯である。秋に島枯山荘に泊り北横岳や雨池峠から島枯山へ縦走した記憶がある。一面雪に埋まり真っ白な世界と群青色の対比は見事だ。頂上の眺めを想像しながら、12本アイゼンを靴に付けた。手袋をつけたままでは上手くいかず、素手で履くが、あっという間に手が痛い。凍傷の痛さを想像した。雪を被った島枯山を横に見ながら坪庭を歩き、いよいよ樹林帯の急騰を登り出す。スノーシュウのご夫婦が前後になり登る。周囲のオオシラビソの木々はたっぷりの雪を抱きモンスターの様だ。もう下山のグループは昨夜北横岳ヒュッテに泊り、ご来光を見ての登山者だ。

 三ツ岳の分岐を過ぎ階段はスノーシューでは苦労して登っていた。ふと前方に屋根が見え北横岳ヒュッテに10時40分到着。一息入れ、「あと15分位で頂上ですよ」がぜん元気になり樹林帯を抜けたら、冷たい風が頬を打ち北横岳南峰2472.5m到着、こちらの南峰に三角点があるため、北峰は2480mあり高いが南峰が北横岳の標高とされた。

 蓼科山は良く見えたが、その後方は雲に蔽われ、寒いので直ぐ北峰へ向う。頂上は風が強いため雪が吹き飛んで少ない。下りは早く、三ツ岳の分岐に11時20分に着き、「岩場が続き危険なので、初心者は立ち入り禁止」の看板があった。私も岩場は苦手で「大丈夫か?」の質問に先生は「私が付いているから、岩に慣れるように、赤岳が見られるよ」に深雪に少ない足跡の上を歩き出した。実は胸が高鳴り、ドキドキしたが、眼の前のゴツゴツした三ツ岩をみて、あれが登れるのはこのチャンスしかないと、思い緊張した。雪が付いた岩は思ったほど怖くは無いが、最期の鎖場はアイゼンでどう登れば、足の置き場も分からず、一挙一動に先生を煩わすのは仕方が無いか、高望みをして何になるかなど考えたが、登れた。この感動は久しぶりだな。でも下りもまた迷惑をかけるかなと思いながらも無事下りられた。なぜか下山は気分が高揚して、鼻歌を歌いながら雪の山道をザクザク歩き、13時30分ロープウェイ駅に到着し、今回の雪山登山は終った。先生に三ツ岳を登れたことを感謝したい。

 今年の山への目標はオーバーした体重を運動で減量して、心肺機能を高め、楽に山へ取り組めるように努力したい。