2007年(平成19年)12月1日号

No.379

銀座一丁目新聞

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花ある風景(294)

並木 徹

いじめをなくすには魅力あるユニークな先生を

 全国の小中学校でいじめの件数が12万件を超える(06年)と聞いて「子ども大好き!だから教師」(吉野工房)の著者、河村保男さんを思い出した。38年間中学校の先生を務め、最後は中学校長で終えた。73歳の現在も教師や保護者、子供の悩みの相談に応じている。河村さんとの出会いは「スポニチ登山学校」(2期生・1997年)、ついで「スポニチマスコミ塾」であった。文章のうまいのには驚いた。さすが国語の先生である。話を聞けば面白く、ユニークな先生であるのがわかった。この本は「生まれ変わってもやっぱり教師」という河村さんの気持ちがよく出ている。
 河村さんは「ホンモノの教師になりたい」と考え「教師はいかにあるべきか」を課題とした。その中の一つに「先生が大好きで授業を受けたくて、きょうも学校にやってきた」(みんなが好きな先生はいじめっ子退治が上手だ)というのがある。
 国語担当の河村先生は授業に入る2,3分間、藤村の「初恋」光太郎の「レモン哀歌」「牛」萩原朔太郎の「竹」三好達治の「乳母車」薄田泣菫の「ああ大和にしましかば」を朗読した。朗読を上手にするために、当時評判の劇団「風」に入門したり「夕鶴」の山本安英のサークルに入ったりする。また授業中の話を面白くするため寄席に通い話術,間などを勉強した。「本当に印象に残る先生は、研究熱心だ。授業がユニークだ。一言一言に味がある。話が面白い。いつもにこにこ爽やかだ」ということになる。
 こどもの叱り方が難しい。大事なのは、怒るべき時は間髪をいれずに怒ることだ。タイミングがずれるともう基本のしつけが手遅れとなる。タイミングずれの回数が増えるたびにこどもたちは教師を見くびるようになる。
 いじめが起きるとこどもは先生の様子をじっと見ている。いじめを克服した成功例が紹介されている。プロレスのヘッド・ロックまがいのいじめをしている生徒が「いじめなんかしていないよ。あいつは喜んでいるよ…」言うのを「喜んでいるんじゃない。怖くて口がきけなくなるんだ…君らに対して楽しそうにしていないとクラスにすめなくなるからじゃないか…」と割れがねのような声を発して蹴っ飛ばした。彼らは渋々事実を認めた。以後そういうことはなくなった。生徒をしかるにはタイミングが必要だ。しかられて当然と思っているのにその時期がずれてしまうと叱っても効果は半減である、特に「いじめ」は初期に発見し、応分の処置をしたら必ず防げると河村さんはいう。
 河村さんは現代の親を分析、子育てがなってないと7つの例をあげる。
 T、子どもの要求に寛大で許容的過ぎる。社会からの要求よりも子どもの要求を重んじる。つまりは,子どもの言いなりになっている。
 2、子どもにとってこわい存在ではなくなっている。親として威厳を示せぜ、友達的な存在だ。親と子の立場の区別がついていない。
 3、しつけなければいけない時期を粗末にしている。言って聞かせればわかるという説得法を大事にし直接的しつけ法を避けすぎる。
 4、子どのの言うことに、物分かり良すぎる礼儀や言葉遣いが、大人として未完成だ。
 5、男女の性差の特徴を生かした育て方に躊躇している。男女何でも同じ?勘違いしている。
 6、家庭の中で勇気とか冒険心とか忍耐力を育てられないでいる
 7、父親が父親の役割を果たさず、母親が母親の役割を果たさないまま、テレビとフアミコンと塾が、アイドルとスポーツ選手とマンガが親の代わりに子どもたちを育てている。
 河村さんならずとも21世紀の日本が心配である。

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