2007年(平成19年)12月1日号

No.379

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茶説

早くも冬山遭難、山は「事故と弁当は自分持ち」

牧念人 悠々

 登山はすばらしい。山を登ることで人生が一変した人もいる。登頂すれば、広がる眺望に圧倒される。高山植物の名前を覚えたり、山の写真を撮ったりする楽しみも覚える。中高年の間に登山ブームが起きるのは当然である。スポニチ登山学校を開設して12年目になる。まもなく閉校するが、この間けが人を出したものの遭難者を一人も出していない。これはエベレスト登頂者を含めた講師陣の指導が行きと届いているからである。日頃から「事故と弁当は自分持ち」を繰り返し教える。疲れた人や体調が悪い人がいるときはお互いに助け合うのをいとわない。天候が悪いときは登山を中止する決断をし、エベレスト登頂のビデオを見せたり、登山の話をして、お酒を飲む会とする。
スポニチ登山学校の校則は1、「山に親しみ山を愛し、山から学ぼう」2、「登山の基本的技術をしっかり身につけ心身を鍛えよう」3、「常に情誼のあつい人間たれ」である。だから3年間、登山学校で学ぶ間にスポニチ登山学校の生徒たちは登山技術を身につけるとともに、情誼にあつく、団結が堅くなる。
 早くも冬山の遭難者が出た(11月23日)。北海道上富良野町の十勝連峰・上ホロカメットク(1920メートル)で日本山岳会北海道支部の11人のパーティが雪崩に巻き込まれて4人が死亡した。山の遭難は99・9パーセントまで登山茶の不注意による。死者は女性(56)男性(60)団体職員(63)無職の男性(68)、いずれも中高年、数年以上の登山の経験を持つ者であった。リーダー(60)がいうように「雪崩に対する判断の甘さ」があった。自然の猛威はベテランも初心者もすべて隙のある者を飲み込んでしまう。
 スポニチ登山学校の卒業生は卒業後もそれぞれ会を作り山を楽しむ。その一つ「山の会クマリ」(会長山本富一さん・スポニチ登山学校1期生)からは毎月「クマリニュース」(すでにNO101号を出す)が送られてくる。その山行記が楽しい。その一つを紹介すると、今年2月の「大菩薩嶺山行記(2月25日)に松田桂さん(スポニチ登山学校2期生)は書く。「富士山は上機嫌でした。貴女が美しいと私も嬉しい。麗しく、凜としてしかも堂々としているその様はまさに感動!もう周りの山々が目に入らないほど。大菩薩嶺の樹林帯の道は自然の懐に抱かれてしばし幸せの極致でした」(「クマリニュース」NO93)。
 山々は山男、山女を招く。四季変化が豊かで、魅力的で時に冒険的であるので一度、山を登れば、次の山へ行きたくなる。一番大事なのは無理をしないこと。山はいつまでもそこにある。逃げたりはしない。「登山中止」の決断をすのが難しい。常にリーダーはその判断を求められている。

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