2004年(平成16年)10月1日号

No.265

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花ある風景(179)

並木 徹

 

時代が変化しても子供の本質は変わらない

 詩人、童話作家のこやま峰子さんから日本児童文芸家協会相模原支部の同人誌「それいゆ」創刊号(2004年9月発行)を頂いた。こやまさんの巻頭文「友の奇跡」によると、1999年町田市で発足した「それいゆ」(フランス語で太陽の意味)は同人誌を発行せず、文学散歩、文学談義を主とする自由で楽しい集いのつもりであった。支部長の高木絹子さんが交通事故にあい(註・昨年11月6日)支部メイン活動の文学散歩ができなくなった。車椅子生活を余儀なくされた絹子さんの動かなかった右手がペンを握れるようになり、今回の同人誌の発行となったという。「バルザックではないけれど、文学に魂を預けた人間にとって生きることは書くことなのです」そのことを再認識させられたと感激して綴っている。筆者もジャーナリストとしてものを書いて50年余、その感を深くする。書いていないと気持ちが落ち着かない。
 絹子さんをはじめ同人が詩、童話、民話などを寄せている。中でも島尻恵美子さんの「輝く子供」の詩とエッセーが心にひびいた。「窓ガラスをびんびんふるわせ 大きな口をあけて 群読する子供たち これは15年前の 音読・朗読に取り組んだ 教室での一風景 子供たちの声は透明で ぞくぞくするほどみごとであった」「子供との思い出の風景は、ある時はせつなく、ある時は心あたたまる、そんなすばらしいものばかり。時は流れ、時代は様々に変化しても、子供の本質は変わらないというのが、長い教師生活で得た私の持論です」。子供の本質が変わらないという言葉に意表を衝かれた。このようにして懸命に生徒と向き合ってきた先生がいたとは嬉しい。文学は美しい魂を育てる。子供にとって群読はいい。教室では15年前と同じような風景が見られるのだろうか。
 56ページの同人誌を編集後記まで夢中で読んだのは私としては珍しいことであった。

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