2004年(平成16年)10月1日号

No.265

銀座一丁目新聞

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茶説

単純な野球が一番難しい

牧念人 悠々

 プロ野球、セリーグは中日の優勝が決まった。落合博満監督が就任時に宣言した通りになる。中日球団オーナーの「オレ流」の強打者を監督にした先見の明に敬意を表したい。落合監督がいっていた。「野球界は保守的で派閥、学閥まとまっているところがある。何のつながりを持たないオレが呼び戻されるとは考えもしなかった」。だから、三冠王3回もとった選手が「一匹狼」故に何処からも監督の要請がなかった。日本の社会はどこでも同じようなものである。常に前を見ている「一匹狼」は固定観念にとらわれず既定概念を打ちやる。だからよく協調性を欠くと批判され、皆から嫌われる。日本の社会ではよほどのことがないがぎリ有能な「一匹狼」に立派なポストを用意しない。
 シーズン中、落合監督が取った采配は「オレ流」ながらすべ理にかなっていた。それは経営の要諦でもあった。「社員のやる気を起こさせ目標達成に向かわせる」のが経営の基本である。この当たり前の事が誰にも出来ない。当たり前のことを当たリ前にできれば、一流の経営者になれる。
 優勝を目標に掲げ、機会あるごとに監督はそれを口にした。試合での落合監督を見ていると、いつも穏やかな表情をして沈着泰然としている。一年目の監督とは思えない。「選手をして富嶽の重きを感ぜしむる」ところがある。一軍二軍の枠を取り払い、努力を認めるよう氣を配り、選手たちのやる気を喚起した。コーチを信頼して総てコーチに任せた。支配下選手70人のうち57人も使ったのはその現れである。起用する選手がその役目をきっちりと果たした。巨人からとった川相選手、代打の切り札、高橋選手がそのよい例である。「野球は8割が投手力で決まる」(中日の防御率は3.91・リーグ第一位)という原則を堅持、守備力を充実した。大砲ばかり集めても試合には勝てない。戦いのコツは「適時必勝を期すべき兵力を集中して諸兵種の統合戦闘力を遺憾なく発揮せしむるにある」当たり前の事である。単純なことでもある。これを実行するのは意外に難しい。とすれば、落合監督は非凡である。

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