2004年(平成16年)8月20日号

No.261

銀座一丁目新聞

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安全地帯(83)

−信濃 太郎−

平和という言葉の真の意味は
 

 笹川陽平さんの本「この国あの国」を読んでいてヨルダンのハッサン王子の言葉にはっとさせられた。笹川さんに王子はこう語られたという。「皆さんは簡単に平和を口にするが、アラブの世界では平和は嫌悪される言葉だ。平和という言葉にアラブ世界に住む人間は幾度となく裏切られ、煮え湯を飲まされてきた。アラブの民はこの言葉の偽善性を見抜いており、この言葉を軽軽に発する欧米の人々を信用していない」
日本人はどうか。戦後、戦死者を一人も出していないこの国は平和を水や空気みたいに容易に手に入るものと思い込んでいる。拉致問題以来「平和憲法」だけではどうにもならないということを感じ始めたようである。
 日本の国連安保理常任理事国入りをめぐって、パウエル米国務長官が憲法9条を吟味する必要があると述べたとして、日本で物議をかもしている。国連軍が紛争地域に出動する際、自衛隊は憲法の制約で、戦闘地域には入れませんでは常任理事国としての責務は十分に果たせない。長官はあたりまえのことを言ったに過ぎない。それよりも国連憲章にある「敵国条項」を早く除外すべきであろう。「敵国条項」は国連憲章107条を指す。この条文は読んでもよく判らない。平たく言えば、第二次大戦中連合国の敵であった日本、ドイツ(ほかに、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリア、フインランドがいる)が国連憲章に違反して軍事行動を起した際、アメリカをはじめ連合国が国連の拘束力に優先して軍事制裁を科すことができるというものらしい。日本、ドイツが国連で重要な働きをしている現在、こんなばかげた条項はない。日本の国連拠出金は2004年度単年度で2億7000万ドル(291億円)で過去最大であった。分担比率は19.5lとアメリカの22パーセントについで第二位である。出しすぎである。あまりにも人がよすぎる。
 平和とは「国際関係について、二つの戦争の間に介在するだまし合いの時期を指していう」という解釈もある(ピアスの「悪魔の辞典」)。耳に快く響く言葉はとくと吟味したほうがよさそうである。

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