2004年(平成16年)8月20日号

No.261

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(24)

―裁決の不透明― 

  世の中、何かと不透明である。スポーツの世界だけは別だと思っていたが、そうでもないようだ。そんなことを感じさせる出来事が、最近の競馬にあった。
 問題のレースは、今年初の2歳重賞「函館2歳S」(函館、芝1200メートル)。8月8日函館競馬場で行なわれた。勝ったのは、6番人気のアンブロワーズ(ホワイト騎手)。早くも「来年の桜花賞に名乗り」などと報じる、気の早いスポーツ紙もあった。
 だが、このレースは、勝ち馬アンブロワーズのホワイト騎手の騎乗ぶりについて、後味の悪いものを残した。直線の叩き合いで、外の2頭の進路を妨害するアンフェアな騎乗をしたのである。左側(外側)へヨレる馬を矯正するには、左ムチを使って、馬を真っ直ぐ走らせなければならない。にもかかわらず、逆の右ムチを使い続けて、馬の進路を修正するそぶりも見せなかった。結果として、外(左側)から追い上げてくる2頭(ディープサマー、カシマフラワー)の進路を妨害した。しかも、追い上げる馬の騎手が声を上げて注意を喚起したのも無視して、アンフェアを続けた。
 これでは、外から追い上げた2頭の騎手が収まらない。明らかな妨害行為だから、失格とまではいかなくとも、降着処分が考えられるところだ。だが、レースは審議にはなったものの、降着にはならなかった。結果は着順通りで、2着はディープサマー(藤田騎手)、3着はカシマフラワー(松永騎手)。この裁決に対して、「パトロールビデオを見れば分かる。被害は受けているんだ。フェアじゃない」と、敗れた藤田騎手は語っている。
 だが、裁決担当は、「接近しているのに右ムチを使っていたことは非常に悪い行為と認識している」としながらも、「降着にあたる事例ではないと判断した」という。しかし、この説明だけでは、納得できないものが残る。なぜ、「降着にあたらない」のか? 判断基準を含め、裁決のあり方が不透明なのである。ホワイト騎手には、過怠金10万円が科せられた。だが、1着賞金は3200万円。過怠金など知れている。そこで、1つの想像をしてみる。
 ホワイト騎手は、高額の1着賞金を手に入れるために、過怠金承知で、妨害行為を続けた・・・。そうだとすれば、悪質である。ホワイト騎手は、短期免許での初来日で、今回が日本での重賞初勝利。「どんなことをしてでも勝てばいい」と考えているとしたら、フェアであるべきスポーツマンの資格はない。裁決のあり方に問題を残したこととともに、納得できないファンも多いはずだ。
 日頃から、審議のあり方に不透明感があるので、「またか!」と、後味の悪さを残した。

( 新倉 弘人)

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