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坂本弁護士一家の10周忌の墓前祭に思う
坂本堤弁護士一家の霊を慰める墓前祭が、鎌倉市の円覚寺で、母さちよさん(67)や仲間の弁護士らが集まって開かれた(11月3日)。坂本さん一家が殺害されてから、早や10年になる。17件の殺人などの罪状で裁判に付されているオウム真理教の教祖、麻原彰晃の判決はいまだに下されていない。 そればかりではない。オウム真理教の信者をめぐって各地で住民とのトラブルが起きている。 坂本弁護士一家失踪事件がオウム事件の原点だと思う。1989年の11月3日、坂本さん一家がいなくなった時点で,新聞が大キャンペーンを張っておれば、その後に起きた松本サリン事件(1994年6月27日)、東京・地下鉄サリン事件(1995年3月20日)を未然に防げたと思えてならない。 1989年5月には、江川紹子さんはオウム真理教に息子や娘を奪われた家族たちの話を取材している。さらに、江川さんは坂本弁護士を家族たちに紹介、坂本弁護士らは6月には被害者家族弁護団を結成して動き出した。 坂本弁護士にしても、訴訟を50余件も抱えており,家族と一緒に家出する理由は全くない。オウム真理教被害者家族会の中心的役割を果たしていただけに、オウムに疑惑の的を 向けるべきだった,まして、坂本さんの家の居間にはオウム真理教のバッジが落ちていた。 この年の10月から七週にわたり、「サンデー毎日」は、「オウム真理教の狂気」と題してキャンペーンを張っていた。 新聞は何故、沈黙を守ったのか。理解に苦しむ。新聞の報道の機能が衰弱したというほかない。新聞も構造改革しないと、いまの時代から取り残されてしまうであろう。そんなことをつくづくと感じさせる坂本弁護士一家の10周忌の墓前祭の記事であった。(柳 路夫) このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。 |