2014年(平成26年)7月20日号

No.615

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
いこいの広場
ファッションプラザ
山と私
銀座展望台(BLOG)
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

 

花ある風景(530)

 

並木 徹

 

小谷明の写真展を観る 

 小谷明写真展「三つの古都を見つめて」(ウィーン、プラハ、ブタペスト 中世から現代へ歴史が彩る生きた世界遺産の街)を見る(7月9日・青山表参道・サロンドフルール)。知人田中裕子さんの学習院大学の山仲間と聞いた。この4月、12歳の孫を連れた三つの古都を見て回ったという。作品は約50点、いずれもよく考えられた角度からレンズが向けられている。

 プラハのカレル橋に目が留まる。少し離れたところから橋を写す。友人、渡辺瑞正君(故人)が描いた「カレル橋の朝」の絵を思い出した。朝もやがだだよう中に人影が4つ、5つ。橋の全長520b、巾10b。橋の欄干には聖人やチェコの英雄など30の像があるはずだが、わずかに数体が黒くみえるだけであった。離れたところから見るカレル橋も良い。この国の歴史を感じさせる。チェコはいまでこそ共和国だが、長い時期、国家なき民族であった苦難の歴史をもつ。橋下のヴルダヴァ川はすべてを包み込み悠然として流れる。

 平成6年5月国際新聞発行者協会の総会がウィーンで開かれ、スピーカーとしてウィーンを訪れているのでその写真は懐かしかった。歓迎会はヨーロッパの3大美術館の一つと言われる美術史博物館であり、その前に見学させてくれた。ブリューゲルの絵をここで初めて見た。楽友会館で開かれた開会式にはウィーン少年合唱の美しい合唱も聞いた。ブルク公園のモーツァルト像、市立公園のベートーベン象の写真も想い出深い。写真「天使薬局」の壁画「天使像」は見落とした。エンゲル薬局は16世紀創業の薬屋さんである。壁画はオスカー・ラスケの作品であるとか。ウィーンの写真では「路地中のショーウインドー」が捨てがたい。真白な壁の二階建ての建物に写しだされている店を閉じた暗い店。その前にジャンバーを着た男の姿がある。それにショウーウンドーに明かりがある店が並ぶ。この店は額縁・画材などを扱っているのだろうか、額縁の絵が見える。色のたゆまざるコントランスが絶妙である。

 「鉄鎖と王宮」(ブタペスト)の写真。王宮とドナウ川に写る王宮の影。幾千の電灯が川面を照らす。この橋は、独立戦争、第二次大戦、ハンガリー動乱と幾多の治乱興亡を見てきた。歴史の証人でもある。

 三つの古都の写真を見つめて思うのは「世は一局の棋なり」ということであった。