安全地帯(429)
−悠久 無碍(ロスアンゼルス在住)−
国家の将来はどの様に変貌するのか
「建国」と言う言葉を聞いた時、人はどの様な概念を抱くだろうか。私には何となく「美しく力強い」響きが感じられる。しかし、良く考えてみると、建国の歴史の多くは、勝者に依って後世に伝えられた物語である事に気付かされ、そこに敗者の言葉を見ることは無く、悲惨で虐げられ国を奪われた原住民の悲しい歴史を見る事はほとんど無い。
昨今、ウクライナのクリミヤ半島が住民投票に依って、ロシアに編入される事に、クリミヤ暫定自治共和国は反発し、欧米諸国はロシアへの経済制裁に向かいつつある。一体、国家と言うのは、誰のもので、どのようにしてそれぞれの国が出来上がって来たのだろうか。
国家の起源にはさまざまな形態があるが、私の知る限り、過去の建国の姿は、多くの場合、外部から進入した民族が、武力によって原住民を押さえ込み、勝手に自分の国であると主張して、世界の多くの国々が出来上がってきたように思われる。現在でも、まだ政治上の主権を持たず、国家として認めて貰えずに居る多くの地域が残されており、或るいは、そこに住む多くの住民が望まないのにもかかわらず、ここは俺の国だから、俺の国の方針に従えと原住民を押さえ込むことで、地域的な紛争は今でも絶える事が無い。
日本の場合はどうであろうか。第二次世界大戦前までは、台湾、韓国、満州などに国を広げ、敗戦によって全てを失い、現在の日本の国家がある。下手をすればあの時、日本は国家さえも失い、国民は皆奴隷として働かせられていたかもしれないと言う現実を真剣に考えた事が有るだろうか。
今後、世界の国々はどの様に、それぞれの国家の形態が変化して行くのだろうか。過去の国作りは、ほとんどが武力や革命に依るものであったが、近年では、米国のアラスカの様に、ロシアに代金を支払って国を購入した事実も有る。そして今、クリミヤ半島は、住民の民意によって、国が創り変えられようとしている。民意と言っても、国民投票の裏には、武力による介入が見え隠れする国々も有る。
今後、国連の力が更に強くなれば、力による侵略は益々困難になる。今の日本は、TPPの問題を抱えているが、これは、強力な国が、弱者の国を飲み込んでゆく為の手段である様に私の目には映っている。少し前の、日本の歴史を振り返れば、徳川政権の崩壊があり、江戸無血開城の歴史がある。それに類似して、何れ、世界各国は、関税を撤廃し、旅券を使わずに自由に行き来が出来る様になれば、世界中の国は一つになるのかもしれないし、EUはそれを目指して居るのかもしれない。
それならば、日本は一体如何にすれば良いのだろうか。また、弱者が、強者を飲み込む術は有るのだろうか。私に見えてくるのは、ペルーのフジモリ大統領、アメリカの黒人大統領、共に、国家の最高の地位に上り詰めれば、必然的にその人の持つ意見がその国に反映されてゆく。確かに、アメリカでは、オバマ政権後、明らかに、黒人の社会的地位は向上し、黒人の多くが政府の要職に就く様になった。日系人がアメリカの大統領になるか、大統領でなくとも、国民の意見を代表する、国家の要職に就く人々が増えて行けば、日本がアメリカを飲み込み、そこに新しい国家を作り出すことが出来るのではないかとも考えられる。その昔、薩長の若者が江戸に出て日本の国政を担ったように。
日本の若者はアメリカに限らず、中国、ロシア、欧米、アジア、アフリカなど世界の国々に出かけ、そこでその国の政治、経済、文化など、その国特有の歴史的思考を学び、その国家の発展と共にそこに根付き、日本の為に働いて貰う事が、日本の将来の繁栄につながると確信している。数年前まで、黒人がアメリカの大統領になるなど、誰も、夢にも考える事が出来なかった事実が実現しているのだ。日系人が各国の大統領になることも決して夢ではない。宇宙飛行士の若田さんを見よ、彼は宇宙船の中で、各国の隊員をまとめ、船長の役目を持ち、宇宙船の進路を決めているではないか。
従って、私は日本の若者に言いたい。これからは、世界中の国々に出かけて行き、その国に移住し、その国の政治を動かすことの出来る人材に育って貰いたいと願うものである。
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