2014年(平成26年)1月1日号

No.596

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茶説

2014年はどんな年になるか

  牧念人 悠々

 新年は例年の如く、府中大国魂神社の初詣から始まる。入り口の鳥居から拝殿まで続く雑踏の中でいつもながら日本人の信心深さをいまさらのように知る。6日朝は同台経済懇話会の会員とともに靖国神社の昇殿参拝をする。祖国のために戦死された英霊に頭を捧げる。戦後69年間の平和は幾多の英霊の上に築かれたものである。
巷では「秘密保護法」ができると市民がすぐ逮捕されるとか「キナ臭い時代が来る」としたり顔で説く識者がいる。南スーダンでPKO活動する韓国軍に自衛隊が銃弾を提供するとまた大騒ぎする。日本の民主主義はそんなやわなものなのか、庶民をバカにしてはいないと言いたい。マスコミ人はそんなに取材力が落ちたのか。さらに言えば、何としでも「戦争と結びつける癖」を早く改めることだ。戦争未亡人の「かくばかりみにくき国となりたれば捧げし人のただ惜しまる」の歌が胸にしみじみと迫る。今の日本は心ばかりか論説も貧しくなった。

 2014年度の国の予算は95兆8823億円。戦後最大である。防衛費を4兆8800億円と増額(前年比2・2%増)。集団自衛権を認めれば、すぐに軍国主義の道に戻ると息巻く。北朝鮮が核開発に狂奔し、中国が年年、軍事費を倍増し、無人月面探査機を月面着陸に成功する宇宙技術を持つ現在、日本は中国にも北朝鮮にも太刀打ちできない。世界の情勢は集団安全保障を考える時代である。その意味からも日米同盟は極めて重要だ。普天間基地の辺野古への移設問題は暮れに決まった辺野古埋め立て申請の承認をえて動き出す。だが、地元の反対が強いのでそう簡単にはこびそうにない。。政府は来年度沖縄の振興策、基地負担軽減を含めて3460億円の予算を計上、その後も3000億円の予算を確保して沖縄の振興策を図るなど沖縄側の要望に真摯に応える姿勢を見せた。いずれにしても力ずくで海洋進出を図ってくる中国にどのようにして対応するつもりか。もっと国を守る意識を持たねばと思う。「国を守る」気概のない国は滅亡するほかない。

 「アベノミックス」の真価が問われるのは今年である。日本経済は。今「脱デフレ」に向けて順調な歩みを続け、年末に4年2ヶ月ぶりに12月の月例経済報告から「デフレ」の表現が消えた。13年度の実質成長率は2・6%、14年度は1・4%、名目国内総生産(GDP)は500兆4000億円と見込まれている。やっと2007年にあったGDP・516兆円の水準に戻る。4月から所費税は8%になる。一時景気が落ち込む。そのために5兆4000億円の対策を打たれるがそれより大切なのが労働者の給料アップ・雇用の増大と設備投資意欲、技術力の増進である。春闘に向けて政労使会議(昨年12月20日)が結んだ「賃上げ合意文書」は中小企業向け「モノづくり補助金」の適正な運用とともに後押しになろう。だが、中小企業にはその恩恵がまだ十分に及んでいないのは気がかりである。技術力といえば最近、朗報があった。原子力発電所の事故現場など人間が近づけない場所で作業するロボットのコンテストが米フロリダ州の自動車レース場で行われた(12月20,21日)。日本から唯一参加したチーム「SCHAFT(シャフト)」が2日間に行われたテストで参加16チームに大差をつけて一位となった。優勝賞金は200万ドル(約2億円)であった。「技術立国」はこれからも強力に推進すべき方向である。今回の予算では科学技術の司令塔の機能強化のために500億円と医療分野の研究開発を進めるために1215億円を計上しているがもっと他の分野にも目配りをする必要がある。

 戦後の平和の美酒に酔い日本人は「常在戦場」の心構えを忘れ「最悪の事態に対処する」心構えをしなくした。「脱デフレ」は日本人がこれまでに経験しなかった事態。処方箋がないのだ。豊かさになれ、国に甘え、言論の自由をいいことにして言いたいことを言う。省益を優先する官僚組織が跋扈する。志を忘れた政治家、マスコミが国民に迎合する。日本の経済再建は道半ばである。まさに正念場で民間の力をもっとも必要とする年となろう。