2013年(平成25年)12月10日号

No.594

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茶説

言葉の重み・・・・新語・流行語

  牧念人 悠々

 今年の新語・流行語大賞に決まった「今でしょ」「じぇじぇじぇ」「倍返し」「おもてなし」を見るとなるほどと思う。アベノミックス、デフレ脱却は「今でしょ」。やるしかないですよ。絶叫調のデモを「テロと本質的に変わらない」には「じぇじぇじぇ」と驚くほかない。中国の尖閣諸島を含む防空識別圏の設定には「倍返し」の平和的な政策はないものかと考え込む。5000万円の「おもてなし」。東京オリンッピク開催が泣きます。

 言葉は人の心を打つ。使い方次第である。座右の書「武士道」は暇を見ては読んでいる。その都度、新しい発見がある。こんな記述がある。ある教授に対する不満からあるカレッジでストが長引いた。校長が出した二つの簡単な質問で解決した。それは「諸君の批判する教授は価値ある人物か。もしそうならば、諸君は彼を尊敬して学校に留まらせるべきだ。彼は弱い人物であるか。もしそうであるならば、倒れた人物を押し倒すのは男らしくないのではないか」。ストの原因はある教授の学力不足によるものだったが校長が示した道徳的な問題に比べると重要な問題ではなくなってしまった。このような言葉を発する校長は人格者であるに違いない。

 9月に自費出版した『人生の余白』−陸士59期本科14中隊1区隊戦後史―を俳誌『自鳴鐘』主宰・寺井谷子さんに送ったところ次のような感想をいただいた。『「八野井大佐の訓示」から胸熱く涙が零れます。「生恥をさらすことを甘んじ真に皇国の将来の為懸命の祈願と無言の奮闘に生くべし」19歳前後の青年たちへこのような責務を説く思い―信頼と願い。改めて「教育」というか、どのような人に接するかの「大事」を思います』。寺井さんは権現山の遥拝所碑に刻まれた『爾来茲ニ二十年刻シテ其ノ芳ヲ後昆ニ流フ』の『芳』の文字にも注目する。私たちの志を知ってくれた依田英房村長の気持ちを知って毎年この地を訪れる私たちである。寺井さんはこの本に私がなぜ八野井大佐の別れの訓示を載せたか。権現山の碑前祭の原稿を載せたのかよくわかっている。嬉しい事だ。寺井さんの「言葉」に対する切れるような鋭さには驚くほかない。寺井さんには学ぶべきことが多い。言葉は決しておろそかに書き、発するものではない。