2013年(平成25年)9月1日号

No.584

銀座一丁目新聞

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茶説

日中問題を考える

  牧念人 悠々

 夕刊フジ(8月23日)一面に「沖縄県・尖閣諸島を奪取しようと中国の脅威が続いている…」という前文のもとに「陸自最強部隊尖閣守る」「中国軍制圧・シナリオ」「強行上陸 水際阻止」などの見出しが踊る。一発触発の危機を思わせる。中国海洋船は尖閣諸島付近における領海侵犯を重ねている。これに日本の監視船は耐えに耐えている。頭が下がる。決して日本は中国と事を構えてはならない。それが先の日中戦争の歴史的教訓である。早く日中首脳会談を開かねばならない。その機運が出てきたように見える。8月15日に倍晋三首相は靖国神社の参拝を控えた。この日参拝者は17万5000人に上った。昨年より1万4000人増えた。国会議員は102名であった。何より目立ったのは若者の姿であった。中国・韓国は首相を含めた国会議員の靖国参拝を「軍国主義を鼓吹する」と非難するが靖国社頭に展開されるのは国のために散華した将兵のために敬虔な祈りをささげる日本人の姿だけである。米中首脳会談(6月)でオバマ大統領が習金平主席に「日本は同盟国であり友人だということをあなた方は理解する必要がある」と釘を刺したと聞いた。これも日中首脳会談の後押しになろう。

 歴史認識について気になる論文がある。資料は友人の霜田昭治君から頂いた。日本は中国にはもう十分謝罪していると思っているのだがそうではないという。日本経済新聞のコラム「グローバル・オピニオン」(7月15日)で米ビュー・リサーチ・センターディレクターのブールス・ストークスさんが日本の負の遺産を韓国人の98%と中国人の78%が日本の謝罪を不充分だと考えているとして「1970年12月にプラント西独首相はワルシャワの強制収容所跡地で慰霊碑に献花し、ひざまずいて許しを求めた。だが、日本はこれに類する瞬間を経験していない」と説明する。

 どうであろうか。私は1995年8月15日に村山富一首相が出した「村山談話」を「個人はともかく、国として他国を侵略したというべきではない。米欧はすべて“自衛のための戦争”であったといっている」という考えから今なお国として発表すべきではなかったと思っている。だが、隔月誌「外交」(外務省発行・時事通信社発売)7月号に興味深い記事が掲載されている。編集長・鈴木美勝さんの村山富一さんとの巻頭インタビュー記事の中で朱鎔基総理が「村山談話」を激賞したという。「あなたのあの談話は、西ドイツのヴィリー・プラント首相がポーランドに行ってワルシャワ・ゲットーの慰霊碑の前でひざまずいた、あれに匹敵するものです。中国は高く評価しています」といっているのだ。日本が「これに類する瞬間を経験していない」というブルース・ストークスさんの指摘は明らかに間違っている。

 村山談話は「日本が植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことを疑うべくもない歴史の事実と明記し痛切な反省の意を表し、心からお詫びの気持ちを表明した」ものであった。共産国中国は時の政権が代われば対日政策はどのようにも変わる。中国は江沢民主席時代からの「愛国教育」が行き届いて反日意識が極めて強い。対日意識調査をすれば悪い結果が出るのは当然である。国と国の間柄は良いときもあれば悪いときもある。未来を見据えて戦略的互恵関係を築いてゆく不断の努力を重ねてゆくほかないと痛切に思う。