2012年(平成25年)1月10日号

No.561

銀座一丁目新聞

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花ある風景(479)

 

並木 徹

 

乗り捨てられた自転車の始末記
 

 暮れから正月にかけてこんなことがあった。昨年の12月26日ごろから府中の我が家の垣根のそばに一台の自転車が乗り捨てられた。はじめは誰かが近くの人を訪ねて置いて行ったのであろうと思った。2,3日たってもそのままになっているので30日朝、府中署に電話、事情を説明した。すると近くの交番から若い警官が来て自転車の特徴など調べ「盗難届が出ているか調べます。出ていればすぐに引き取りに来ます。出ていなければ市役所に連絡してください」と言って引き揚げた。午後のなってその警官が来て「盗難届が出ていせんので・・」と言って帰った。警察のやることはまことに早い。帰りしなに、若い警官に「年末の忙しいさなかつまらないことで来ていただいてご苦労さんでした」といたわりの声をかけた。

 実は自転車には「駐輪証」が貼ってあって「中之島・A企画」とあったので電話帳で調べたがわからなかった。昔の電話帳には個人はもちろんのこと企業名も掲載され膨大であった。昨今は個人のプライバシー保護と称してきわめて薄く、もの用に立たない。不便になった。警察に届けた以上、責任を持って保管しなければと思って我が家の敷地に自転車を入れた。正月休みの開けた1月4日午前10時過ぎ、市役所の放置自転車を扱う「地域安全対策課施設管理課」に電話した。自転車の特徴を質問した後「自転車が敷地にあれば引取りはできません。道路に放置されておれば取りに行きます」という。受け答えが杓子定規であった。そこで元のあった場所に“放置自転車”としておいた。1月7日午後2時40分に市役所から人が来たらしく、自転車に「速やかに適当な駐車場に移動してください」という張り紙がしてあった。どうやら警告して一定期間後、この放置自転車を引き取るようだ。すぐ引き取ればよいと思うのに、そう簡単にはいかないようである。考えればおかしなことである。連絡をした私のところに事情を聴くこともなく警告の張り紙をしてゆく。すでに12日間も放置されている。警告の必要はまったくない。即座に撤去すればよい。あまりにも機械的な処理の仕方である。私はいろいろ考えた。こちらから駅前の自転車場所に持っていこうか、適当な場所に捨てに行こうかなどと思った。

 府中市の人口は昨年12月1日現在25万2036人。私は昭和30年1月から住んでいる。市民憲章には「おたがいに尊敬しあい 力を合わせてあかるいまちをつくりましょう」「決まりを守り良い風習を育て住みよいまちをつくりましょう」とある。心無い人々がこの町を汚してゆく。私には気まずい思いだけが残った。