花ある風景(444)
並木 徹
小倉百人一首の書と画
知人で画家の岡井原美子さんのお母さん岡井揺萩さんからこのほど『小倉百人一首』書・画を頂いた。大きさはA4。歌に合わせた画を添えて一番の「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」(天智天皇)から百番の「ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」(順徳院)まで克明に描かれ優雅な筆運びで歌が記されている。とりわけ描かれた花がなんとも可憐、見ていて楽しい。「半世紀ちかく書画をこつこつ書いてきましたので記録として残したく百人一首を選びました」(あとがき)とある。お年は96歳である。何年か前、表参道で個展を開かれた際、一度お目にかかったが、物腰の柔らかいやさしい女性と言う印象を受けた。
満州はハルピンにいた小学生のころ、正月遊びは百人一首であった。そのころは歌の意味はほとんどわからなかった。
それでも40番「忍れど色に出でにけり我が恋は物や思ふと人の問うまで」(平兼盛)ぐらいは察しがついた。中学生の時は寄宿舎生活となり次第に縁遠くなっていった。今はかるたでもトランプ遊びである。木箱に入った「百人一首」はどこへ行ったか行方不明である。10年も以上も前に毎日新聞時代の友人が年賀状に六番の「かささぎの 渡せる橋におく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける」(中納言家持)を記し、昭和の初めころ百人一首でこの歌を知ったと書いてきた。
百人一首に自分の心境を伝えるのも一興である。さて私の昨今の心境に相応しい歌を挙げるとすれば、96番「花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり」(入道前太政大臣)。
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