2011年(平成23年)10月20日号

No.518

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茶説

国 旗(日の丸)・国 歌(君が代)

 安 本丹

 数年前、後輩のドライブでアメリカ西部を周遊する機会があり、気の毒に彼は片田舎のガソリンスタンドのトイレに、パスポートを入れたポーチを置き忘れ、10分ぐらいたって気が着き急いで取りに行ったがさすがアメリカ、無くなっていた。青くなって警官を呼び、監視カメラのモニターなど調べたが、だめで警察へ行く。時速100キロのパトカーについて山の中を30分、やっと着いた田舎の淋しい警察署、アメリカ国旗が翩翻(へんぽん)と翻る。アメリカは学校・各役所・郵便局のような公共施設に必ず国旗が掲揚されている。もっとも永住の姪に聞けば彼女の小学校では各クラスに国旗が立てられていて、毎朝始めに、忠誠を誓うお題目を唱える。他民族国家ということもあるだろうが、これが愛国心を醸成する自然の教育なのだ。

 これからのことは、決して孫の自慢をするのではない。日本の異様さを言うのである。5年ほど前のこと、孫が東京大学大学院を卒業した。勧められ喜んで陪観参列した。場所は、当時、某総理が市民運動の学生時代で、弁当運びをやっていた全学連と警視庁機動隊との古戦場、安田講堂である。お偉い教授の方々が善光寺のお練りまがいに角帽、ガウンの裾長を着てお練りのセレモニーがあり、それから、式場に入る。ところが、国旗掲揚が全く見あたらない。文部科学省所管、日本国立最高学府においてである。立派な設備、教授たちをそろえ東京の一等地にあるのは、多少の学費はともかく、将来の日本を担(にな)う有為な人材を育成してもらうため、国民がどのような気持ちで大事な血税でお願いし、期待しているのか。そして式次第に国歌演奏も斉唱もなし。もっとも歌える連中が少ないかも。全学連がすきを見て安田講堂を占拠したのもむベなるか。また、今、そこに携わっている方々はその重大な使命をご承知なのか。そんな教育を受ける日本の将来は。実に暗澹たる気持ちになった。わが日本をいかんせん。わが日本をいかんせん!

 時移り、本年10月4日東京大学大学院留学生入学式挙行のテレビニュースを見、愕然、式場に国旗なし、再度インターネットで確認、おまけに式次第に国歌なし、東京大学の歌ありとは。堪忍袋の緒がきれ、あまりのことに憤懣やるかたない。

 一昨年、次の孫が東京工業大学大学院を卒業した。それも参列することができた。ここも勿論国立である。校門に大日章旗、お練りなし、式場正面には国旗掲揚、国歌斉唱、式は厳かに行われた。蛍の光の合唱もあり、さすが、国家国民のための質実剛健の大学と痛感する。おまけに孫が博士になれたのに感激。大学によってこんなに違うものなのか。ただまれに、大部分の国民がお下がりを願って、異国の学校のことを思い、最後っ屁を残していった宰相で、巡礼をしている異端児の市民運動家の先輩(本当に勉強していたかどうかは不明)がいたが。

 ほとんど脛かじりの学生の大学の自治ばかりが優先し、今になってまだ軍国主義とか戦争(実は経験のないものが大部分)とかは論外だが、国旗・国歌に対し文科省の指導は小・中・高と弱いものばかりに向けられ、最終学府として肝心の東京大学はどうなっているのか。また、大学は国立としての認識があるのか、ないのか、その了見が聞きたいものだ。 

 余談だが、私は二人の孫に大学入学の祝いに「よくて努力し頑張った。おめでとう。しかしこれから、君たちが一生懸命勉強をして、お国のため立派に各職場で尽くしてもらいたい。そのため国民は大事な税金を払って君たちに期待していることを忘れてはいけないよ。」と言い聞かした。そして、卒業時「おジーちゃん。税金で勉強させてもらって卒業できました。」と。孫は意識して言いつけを守ってくれた。今は各々社会に雄飛している。

 かつて私は、日本大学付属中・高等学校の事務長として奉職していたことがある。特に日本大学は、国旗の扱いは慎重、必ず儀式には校門・屋上・式場には掲揚するのが当たり前で自然であった。昭和天皇崩御の時であった。用務員に屋上へ半旗を掲げさせた。ところが教職員組合の幹部数人が用務員のご注進か、他校との仲間の申し合わせでもあったのか、突然、事務室へ「なんで国旗を揚げたのか。揚げたのは誰だ!」と怒鳴りこんできた。奥にいた私、「俺だツ!国旗を揚げて何が悪いツ!」と即座に立って大音声で怒鳴り返した。いつもヘラヘラしていた私の剣幕に彼らは、ビックリ仰天、黙って帰って行った。変なところで軍隊教育が役立つ。そんな怒鳴られかたをしたのは初めてだったのだろう。とにかく、日本人ならば日の丸、君が代を尊重しよう!