2011年(平成23年)9月20日号

No.515

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花ある風景(431)

 

並木 徹

 

 オペラ「カルメン」を見る
 

 ウィーンの森 バーデン市劇場・ビゼーの歌劇「カルメン」を見る(9月10日・川口市・リリア・メインホール)。昨年は同劇場の「ラ・ポェーム」を見た。1996年から毎年来日、公演はすでに275回というからなじみの劇団である。

 モーツアルティアーデ管弦楽団(指揮クリスティアン・ポィラァック)による「ハバネラ」「闘牛士の歌」などを快く聞いた。

 ドン・ホセ伍長(ヴァレリィキン)の運命はカルメン(インガ・カァラチャンッツ)投げたアカシアの花で決まる。「おきてなんか知らないよ」と歌うカルメンの情熱の前に男は“恋いの虜”となる。傷害事件を起こしたカルメンを護送中に逃がしたとして降格され営倉に入る。やがてカルメンが仲間の密輸団に加わる。カルメンが心変わりした闘牛士エスカミーリョ(スォコリィン・アスルゥラアニ)と決闘をするが子供ように扱われ勝負にならない。嫉妬と屈辱にさいなまれる。「ハバネラ」は男の恋が嫉妬となって暴力や哀願に変わり、訴え続けるドン・ホセのカルメンに迫る愛も終局に向かっていることを暗示しているという。男にとって悲しい曲だ。

 バーデン市はウィーンから南に25キロにある。ヨーロッパのオペラのメトロホールと言われ、6月から9月にバーデンオペレッタフェステイバルが開かれる。この保養地にモーツァルト、ベートベン、シュトラウス、レハール等の著名な音楽家が逗留したと伝えられる。

 「恋は盲目」。田舎から許嫁のミカエラ(ニィコヲォラァ・プゥルォック・マルティニック)母の手紙を持ってやってくる。ミカエラの美しいアリアが会場一杯に広がる。それでもドン・ホセの気持ちを翻すことは出来なかった。恋は「私が惚れたら覚悟しな・・・」という方が強いのは古今東西何処の国でも変わらない掟である。

 エスカミーリョが闘牛を射止め歓声が上がる闘牛場前でドン・ホセはどうしてもわが愛を受け入れないカルメンを殺す。「ああ、カルメン。俺の愛したカルメン」と絶叫する。

 私が中学生活を送った大連にはアカシアの花が咲いていた。あの頃は食う気一本で恋などは無縁であった。アカシアの花を私に投げる女学生もいなかった。物思う秋である・・・