安全地帯(322)
−信濃 太郎−
独断専行は戦いの常である
東京電力福島原発事故で1号機のへの海水が中断されなかった問題で独断、海水注入を続行した吉田昌郎所長への風当たりが強い。さらに政府の情報把握のまずさも問題になっている。驚くにあたらない。世界の原子力発電史上初めの重大事態が進行しているのである。地震の規模マグニチュード9.0.巨大津波が発生、6基の原発が被災した。運転中であった1号機、2号機、3号機の炉心には自動的に制御棒が挿入されて炉心の核分裂反応は止った。ところが津波がやってきた。停電で止まった冷却システムを動かしていた非常用ディーゼル発電機が冠水して動かなくなってしまった。原子炉が冷やせない事態に立ち至った。この危機をどう乗り切るか。生きるか死ぬかの瀬戸際である。現場はまさに戦場である。この危機を乗り切るは現場の指揮官だけである。
5月27日のブログに次のように書いた。「かねてから東電福島第一原発の所長は事故の際何をしていたのか疑問に思っていた。それが今回1号機の海水注入中断問題で端なくもよく働いていることが分かった。
1号機の海水注入は5月12日午後7時4分から始まった。それが午後7時25分ごろ一旦中止したとされてきた。ところが吉田昌郎所長は『冷却が最優先で、発電所の安全確保、作業員の安全確保の観点から受け入れられなかった』と独断で海水注入を続行したというのだ。私はこの判断は正しいと思う。現場の模様を知らず指示を出すほうがおかしい。東電は所長を処分するというが海水注入を中断していたらどうなったか、被害をさらに増大したであろう。所長の独断をほめるべきである」
戦後66年日本は平和に慣れてしまった。戦場の心得など知る由もない。『作戦要務令』には次のような事柄が書いてある。「およそ兵戦の事たる独断を要するものすこぶる多し而して独断はその精神においては決して服従と相反するものにあらず常に上官の意図するところを明察し大局を判断して状況の変化に応じ自らその目的を達しうべき最良の方法を選び以て機宜を制せざるべからず」
原子炉の安全の三原則は「止める」「冷やす」「閉じ込める」である。想定外の津波のため「冷やす」につまずいた。そのため水素爆発を起こした。3月12日1号機、14日2号機15日、4号機、2号機がそれぞれ爆発が起き放射背物質が外部に漏れた。今日の避難騒ぎになっている。
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