2011年(平成23年)5月20日号

No.504

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茶説

菅首相は早く辞めていただいた方がよい
 

牧念人 悠々

 菅直人首相の要請により中部電力浜岡原発4号機、5号機が停止された。この要請は福島第1原発事故に対する“原発の恐怖”の世論に巧みに乗って、歓迎された。動機が私利私欲であっても時には国民やマスコミから支持されるものもある。だから菅首相が「適任である」と言うことにはならない。

 停止決断を“菅降ろし”や「不信任案提出」阻止に使ったとしたら「許し難き邪道」と決めつけた政治評論家もいる。私もこの意見には賛成であるばかりか菅首相のお得意のパーフォマンスであるとみる。首相は「浜岡原発の停止」を国家戦略もなければ党内議論も果たしていないのに突如として発表した。浜岡発電所のある御前崎市の石原茂雄市長はこういっている。「5月5日海江田万里経産相が来て“地元の意見を聞いてから判断する”と言ったのに翌日の6日にいきなり発表だ。愛情がない。40年余り国のエネルギー政策に協力してきたのは何のためであったのか。国策だというなら国内の全原発を止めるべきだ」(スポニチ)。つまり海江田大臣はもっと詰めてから「停止」を発表する段取りを立てていた。それを菅首相が一切の根回しをせずその案を横取りしたふしがある。機を見て敏と言えばそれまでである。さらに発送電の分離まで示唆する。

 御前崎市長は「愛情がない」と嘆いた。その通りである。権力の座にしがみつこうと私利私欲で物事を判断するから愛情が感じられないのである。この人が3・11以来やってきたことを見るがよい。阪神・淡路大震災の際仮設住宅は震災後43日で7013戸が完成した。74日後には3万8399戸を数えた。今回は60日後でわずか7441戸にとどまる。被災者のことなど考えていない。菅首相の避難所見舞いの態度を見ても分かる。被災者に対する態度がなおざりである。心がこもっていない。今なお公共施設で避難生活を余儀なくされている被災者は12万人に上る。首相がこのていたらくだから下のものがだらけて海外でゴルフを楽しむことになる。弱將のもとに弱兵有り。

 最も度し難いのはこの人には日本を守ると言う自覚のないことである。先の尖閣列島での中国漁船の衝突・公務執行妨害事件で見せた卑屈な外交姿勢によく現れている。今回も自衛隊の災害地派遣にしても防衛上のリスクも考えず、自衛隊の逐次派遣を行った。兵力の逐次出動は戦術上最も拙劣な方法とされている。首相の指示で3月11日2万人、翌12日には5万人、13日は10万人にふくれあがった。自衛隊の東北の部隊は三陸地方では地震が99パーセントの確率であると確信して日頃から関係県と訓練を重ねてきたから地震が起きた3月11日午前2時46分には東北の部隊は重機械を取りそろえいつでも出動できる体勢にあった。即応予備自衛官も全員、喜んで災害救助に応じた。ここで問題がある。自衛隊出動10万人という数字である。これは自衛隊の人員の半分以上を越える。最悪の事態を考えればこれほどの人員を動員して国防上いかがなものかと言うことである。しかも安保会議も開かないで決定している。首相には「常に最悪に事態に対処する」という自覚が皆無と言っていい。つまり1000年に一度の地震・津波にあわてふためき、思いつきを言い、知恵のありそうな知人、識者でいくつもの組織を作り、対処した。これまでの組織・経験・歴史を生かそうとしなかった。この性格は「死ななきゃ直らない」と昔の人はいった。