2010年(平成23年)4月20日号

No.501

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茶説

言葉は国を解体し大殺戮引き起こす力がある。
 

牧念人 悠々

 詩人山崎佳代子さんが日経新聞文化欄に寄せた「言葉という運命」(2011年1月16日)の中で見出しの言葉を綴っていた。正確に言うと、「・・・大殺戮を引き起こす暗い力を秘めている」である。山崎さんは重大なことを示唆している。

 というのは菅直人首相の発する言葉がしばしば軽すぎるからである。最近のこの発言をどう感ずるであろうか。牧太郎さんがブログの「編集長日記」で紹介していた菅さんの発言である。
『松本健一内閣官房参与に「福島第一原発周辺地域は10年、20年住めない」と話したと言うのだが・・・まさか? 菅さん、必死に「僕は言わない」を連発している』。(菅首相は4月18日国会で事実無根と答弁した)

 言葉はその人の本心が出る。無意識に出る言葉であってもそれは本心である。
福島原発事故について東電は収束への工程表を発表した(4月17日)。もっと早く出すべきものであったと思う。「ステップ1」(3ヵ月程度)で「放射線量を着実に減少させる。安定的に冷却、汚染水の外部流出の防止、放射性物質の飛散防止」をする。「ステップ2」(6ヵ月9ヵ月程度)で「放湿が管理されて大幅に抑制される。冷温停止状態にする。燃料プールの水位の安定、汚染水の処理・減少、建物を遮蔽」をする。いずれも放射線量の高いところでの作業である。予定通りに進むか分からない。それでも東電は懸命な作業を続けている。出された工程表を冷静に見守るほかないであろう。

 菅首相の発言は東電の工程表発表の前とは言え無神経すぎる。責任感ある態度とはいえない。首相には異常行動が多すぎる。危機に際して「首相」はどっしり落ち着いているものであるのにすぐ飛びだしたり、怒鳴りこんだり、やたらに指示して20もの委員会を作ったりしている。しかもそれを正しいと自画自賛するありさまである。先の統一地方選挙の前半戦で民主党は与野党対決型の3知事選で全敗し、同府県議選でも改選時の勢力を下回るなど“完敗”したではないか。有権者は菅首相の下では復興はもちろんのことこのままでは国を滅ぼされかねないと感じている。世論調査ではそれがはっきりと出ている。「菅政権に復興を任されない」というのが67.8%、「任せられる」が28.0%にすぎない(産経新聞4月18日)。また石原慎太郎都知事が4選を果たしたのは「リーダーシップのある強い指導者」を求めたからにほかならい。一部マスコミが「現職の安定感が有利に働いた」という微温的な表現よりも有権者の方が敏感に鋭く反応している。菅首相が発する言葉にリーダーシップも感じられず、この国の行方に危惧を抱いたに違いあるまい。

 山崎佳代子さんは綴る。「心を込めて発した言葉はどの国の言葉であれ、人と人の心を結ぶ。だが同時に言葉は国を解体し大殺戮を引き起こす暗い力を秘めている」。

 私はこれまでしばしば菅首相の退陣を求めた。この人の言動が己の私利私欲のためにしか動いていないと感じたからである。それがはしなくも「言葉」に表現されているということである。