2010年(平成22年)11月1日号

No.484

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花ある風景(399)

並木 徹

 竹山愛さん、日本音楽コンクールで第一位となる

 
 日本音楽コンクール本選会(10月25日)で5人によるフルート演奏が終わって会場の東京オペラシティホールで結果発表を待つまでの30分間は長かった。このような気分になるのは最近では珍しい。結果は期待していた竹山愛さん(24)が第一位となった。その瞬間、竹山さんの表情は崩れた。それも一瞬であった。応募者180人、1次、2次、3次予選を経てきて最後に残ったのは5人だけであった。涙をこらえてNHKのカメラの前に立ち記者の質問に答えていた。私は4番目に登場した浜崎麻里子さん(24)=第2位=と甲乙つげがたいと思っていた(一番初めに演奏した上野星矢さんも2位)。11人の審査委員の好みの問題であろうと推察した。竹山さんとは同じ東京芸大の大学院生で、「これまで数々の音楽コンクールでお互いに一位と二位を譲り合ってきた」とは竹山さんの母親の話であった。竹山さんと親戚の國分リンさんは「第3次予選での現代音楽の演奏が抜群であったそうよ」と言っていた。プログラムを見ると、平成7年からフルート部門は第三次予選での点数の60パーセントを本選の点数に加算した合計点で順位を決定することになったとある。これでよく分かった。私は彼女の現代音楽を平成20年10月7日丸ビルホールで開かれた「三菱地所賞・受賞者記念リサイタル」で聞いている。この時竹山さんは一柳慧が阪神淡路大地震をモチーフにした現代音楽を演奏した。素晴らしいで出来映えであった。演奏後、私は竹山さんに「あなたが進むべき道は現代音楽だ」と進めたほどであった。この時の模様を記事にした本紙「花ある風景」(平成20年10月10日号)には「おそらく数年を経ずして竹山愛はフルートで現代音楽を演奏させれば第一人者になるであろう」と結んでいる。

 竹山さんが演奏したニールセンのフルート協奏曲は第一楽章アレグロ・モデラート、第二楽章アレグレットで構成される。演奏態度は堂々としていた。第二楽章で見せた高い張りつめた旋律は他の追従を許さない。毎日新聞(10月26日)には「深さと繊細さを併せ持つ音色と技巧で魅了した」と表現されていた。彼女自身は「こんな楽しい本番は久しぶりでした。お客様の呼吸や空気を感じながらピアニストとの会話・・・ニールセンの音楽が私を温かく包んでくれるようでした」という感想を漏らしている。この日、聴衆が選ぶ岩谷賞(聴衆賞)も受賞した。

 初めて彼女のフルートを聞いたのは平成20年2月東京芸大の構内にある奏楽堂であった。カレヴィ・アホ「フルート協奏曲」であった。この時、詠んだのが「若き芽の高らかな音や春近し」の俳句であった。それから2年、若き芽は早くも大輪を咲かせようとしている。

「若き芽は大輪めざす薄紅葉」 悠々