戦友の遺稿集川口君を偲んで「旅のあかしに」（Ａ５版・７０ページ）が７月末やっと出来上がった。３年前に同期生の安木茂君が「会いたい」と電話で言ってきた。名前を知っていてもあったのはこれまで一度もない。同期生の頼みは断わらない主義である。市ヶ谷の偕行社で会う。

　聞けば、平成１９年４月２１日に死んだ川口久男君とは鳥取１中からの親友であり、手元にこれまで手紙やはがきで川口君が書きとめた俳句がたくさんある。これを含めて彼の句集を出したいという。早速、川口君の手紙やハガキから俳句を抜き出してまとめ、すでに川口君が出した句集「旅のあかしに」をつけ加え、これに安木君の前文をつければ本になると安木君の元に原稿を送った。そのままになっていた。今年の１月、再び偕行社で安木君とあう。「何とかして出してくれ」と金・１０万円をさし出した。同期生の誼だ。残金は私が持つことにした。前文もあった。親友でなければ書けないものであった。川口君には中学１年生の時にすでに「ハンカチ包みあまりし防風かな」の句がある。小学校５年生から母親の手ほどきで俳句を始めたというが、安木君ならずとも私も愕然とする。

　川口君と会ったことはない。平成１９年１月１８日、同期生の会合で田中長君から川口君の句集を見せて貰ったのが始まりである。その時、句集の感想を『銀座１丁目新聞』（平成１９年２月１日号）に掲載した。まだ見ぬ川口君には「もののふの誇り忘れじ春を待つ」の句を送った。

　追悼句集を出す以上は良い本にしようといろいろ考えた。同期生の田中長君と相談する。川口君とは航空士官学校時代、満州で司令偵察機の操縦訓練をした仲間である。戦後も付き合いがあった。田中君には「追悼録」や墨字で「人生に余白ありて日向ぼこ」を書いていただいたほか川口君の写真、川口君の夫人喜久子さんから田中君にあてた手紙などを提供していただいた。良い追悼句集ができたと思う。製作していただいた毎日新聞東京センターに感謝したい。