花ある風景(388)
並木 徹
今、政治に何が必要か
新生「ふるさときゃらばん」のミュージカル
新生「ふるさときゃらばん」のミュージカル「トランクロードのかぐや姫]を見る(7月2日・東京・日本青年館)。2度目である(2010年5月1日号本誌参照)。参議院選挙のさなか、会場は満員であった。4月「北とぴあ」で見たのとはまた違った印象を受けた。前に、見落としたものが見えてくる。感じなかったことが心に響いてくる。
全員の歌と踊りで開幕する。「国にも地方の町や村にもお金がない・・・」と歌う。国には860兆円もの借金がある。地地方は言うに及ばない。財政再建のために菅直人首相が唱えた消費税は迷走を続ける。その支持率は41%まで急落した。ミュージカルは宿場町の商店街に舞い降りた失恋の娘が寂れた呉服屋でちょっとした工夫で商店街を明るくする。古い豆腐屋も電気屋も刺激される。
新商品を開発すると意気込む豆腐屋の踊りは抜群である。見ていてさわやかである。この豆腐屋のおばさんは、熟練工で失業した“崖ちゃん”とともに宿場道路拡張の立ち退き料を当てにして反対派とトラブルを起こす。前回この“崖ちゃん”役は真壁宗英で、迫力ある踊りと歌を披露して拍手を浴びた。今回は急病でベテランの谷内孝志が代役出場した。さすが谷内、見事にその役をこなした。その懸命な所作に頭が下がる。
落選した元市長は言う。「工事中の八ッ場ダムでも中止になる時代だ。道路拡張事業も事業仕分けで中止になった」。観客席から笑いが起きる。事業仕分けで活躍した蓮肪行政刷新大臣は民主党にとって”かぐや姫”かもしれない。だが現実にはその人気も陰りを見せ始めた。
元市長は保母の経験を持つ奥さんが開く託児所をけなげにも手伝う。近所の洟垂れ小僧や子供の面倒を見る。「さすが元市長」とおだてれながら頑張る。待機児童が多い昨今、子育てにお金をばら撒くよりは中高年の人を活用して託児所を開設したほうがよさそうな気がしてならない。
元市長の父親は宿場町の古くからある下駄屋さんである。派遣切りで帰郷してきた孫があとを継ぐと言い出す。それも「かぐや姫」に影響されたところがある。ミュージカルは家庭の絆の大切さを示し、地域おこしのヒントを与えながら面白おかしく展開する。結論はやる気のある人が3,4人集まって行動を起こせば町に元気が生まれるということである。そういえば、聖書に「その国に10人の義人がいればその国は滅びない」という言葉があったのを思い出した。