競馬徒然草(153)
―作戦勝ちの教訓―
年明け早々の重賞レース「京都金杯」(GV)と「中山金杯」(GV)に続いて、1月18日の「日経新春杯」(GU、京都・芝2400)が波乱になった。11番人気のテイエムプリキュア(牝6)が勝って、大穴をあけたのだ。それもスタートから先手を取って逃げの手に出ると、そのまま鮮やかに逃げ切ってしまったのだ。この馬は前走の愛知杯18着、前々走の鳴尾記念13着と大敗している。どちらも重賞レースとはいえGVでこの成績では、今回のGUでは人気が低いのも当然のことと見られた。それがなんと意表を突いた逃げの手を打ち、見事に逃げ切ってしまうなど、予想し難いことだ。
レースに出走するからには、「どの馬にもチャンスがある」ということなのだろう。そして、そのチャンスを「どう掴むか」ということなのだろう。テイエムプリキュアの場合、まともなレースをしても勝ち目はない。そこで思い切った逃げの手に出ることで、活路を見出そうとした。それがまんまと成功したというわけだ。この作戦の成功は日常のわれわれにさまざまな示唆を与えてくれそうだ。昔の剣の極意に、「当たって砕けろ」というのがある。手をこまねいているだけでは、道は開けない。そういうことも示唆してくれたレースだった。テイエムプリキュアは、当初、このレースを最後に引退を考えていたというから、最後に花を咲かせたことにもなる。
(新倉 弘人) |