2007年(平成19年)8月20日号

No.369

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花ある風景(284)

並木 徹

平成版「桃太郎の鬼退治」

 劇団「ふるさときゃらばん」のミュージカル「雲たか山の鬼」を見る(8月14日・渋谷C.C.LEMONホール)。作・演出・石塚克彦、演出助手・天城美枝、音楽・寺本建雄。昔の『桃太郎と鬼の物語』を現代的にユニークに解釈、結末も意外で面白い。
 川で洗濯しているところへ流れてきた桃をおばあさんが持ち帰り、山の芝刈りからかえって来たおじいさんと二人で仲良く二つの分けて食べる。すると二人ともそれぞれ25歳づつ若返った。二人の間に生まれたのが桃太郎(野々川護)。村の長(三井善忠)の娘・アカネ(高橋怜奈)と木地師・次郎(山田直樹)の娘タマ(岡田さゆり)が雲たか山の鬼に浚われる。桃太郎と次郎と猟師の犬丸(西田慎)の3人で斧や山刀を持って出かける。山で迷う3人の道案内をしたのが与平(大野一夫)の娘・佐代(浅田雛子)であった。猿女と呼ばれる佐代は与平が犬丸の母親ソデ(北村華那)を親切にしたことから村人の好奇の目にさらされ、いたたまれずに、鬼のいる雲たか山に逃げ込んでいた。佐代の動きにキレがあって目立った。いい女優さんが出てきた。
 猿女に案内されて鬼の住処に来ると、祭りの夜で、鬼たちは太鼓を打ち鳴らし、歌い、踊り、酒をのんで楽しげであった。隙を見て、3人は飛び込んだが、あえなく取り押さえられる。すると鬼の大将、梁山(五城目大五郎)は『技術協定』を持ち出す。桃太郎から炭焼きの技術を、次郎からはお椀作りを、犬丸から猟の仕方をそれぞれ教えてほしい、そのかわり、鬼側は鉄を作りクワやスキをつくる。堤防など治水の技術を教え、村から洪水を防ぐようにするという。舞台上で大五郎さんと宗英さんがこの暑さにめげず健在であったのは嬉しいことであった。
 話はこれだけで終わらなかった。アカネにマナーを指導していた鬼・ナイト(出口栄一)が恋敵、桃太郎に決闘を申し込む。戦ううちに桃太郎はアカネの気持ちがナイトに傾いているのを知り決闘を止める。鬼は恐ろしくもなければ、人間と同じい心をもっていた。万事めでたしめでたしというわけである。平成版「桃太郎の鬼退治」は、人にしろ国にしろ、噂だけで判断してはいけない、何事も話し合いが大切であると示唆する。そんな理屈はともかく笑いが暑さを忘れさせてくれたのはなによりであった。

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