2007年(平成19年)6月20号

No.363

銀座一丁目新聞

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山と私

(34)
国分 リン

−幼馴染と上高地行−

 天気予報は、冷たい寒気が中国大陸から日本列島に下り、雷予報になった。幼馴染の仲間達とはこの10年来、年に数回会いおしゃべりや旅行を楽しむ。私が山へ登るのを心配や応援もしてくれる。昨年は草紅葉の尾瀬ヶ原と三条の滝へ皆を案内して歩く。木道がらおぢねように、気っつけんべ等会津弁が飛交う。よく歩ったなしの話から、今年は私の好きな新緑の上高地を企画した。

 12人の幼馴染に声を掛け男性6人が体の不調や都合で不参加、6人で出発、普段は自家用車利用で、中央線特急あづさ初乗車5人には驚いた。大阪から参加の男性もいて、坂下の酒「飛露喜」の一升瓶(飲めない女性からの差入れ)と手作り弁当に大喜び。朝から口に含み味わい、この一升瓶をザックに詰め込む。
 松本から予約のタクシーに乗り込み、12時に大正池へ、車を降りて記念撮影、残念ながら焼岳は雲の中ながら、風情のある大正池の静けさを味わう。その脇を観光バスが数台続き上高地の喧騒を思う。昼食も人数分のお握りを差し入れた友に感謝し、とても美味しかった。心配な空模様を眺めながら河童橋で、穂高をどんと見せてあげたい希望は、雪の岳沢は半分だけで頂はガスの中残念である。梓川の左岸を明神に向け歩き出す。新緑のなか気分がいいので賑やかだ。遠雷が聞えた。早めに傘や雨具をつけ木道を歩く。1時間程で明神へ到着、嘉門次小屋の囲炉裏の火で焼いた岩魚と骨酒を進め、休憩を取るため小屋へ、雷と雨が激しくなりタイミングがよく皆で喜んだ。薪でじっくり焼いた岩魚は頭から尻尾までかりかりとおいしい。雨模様なので静かな明神を楽しむ。
 雨も小降りになり、今夜の宿の徳沢園を目指す。係りとして4時までに宿へ着きたいと思い早足で一足早く徳沢園へ到着。皆を迎えに出て4時半に部屋へ、相部屋を予約して心配であったが、二人ずつの仕切りのある部屋で安心した。氷壁(井上靖)の山小屋であるが、以前2度泊まり蝶ヶ岳へ登る。落ち着いた黒光りの木造の建物で、皆を是非案内したいと思い今回実現した。実際山へ登る人は少なくカメラの人たちと徳沢までの散策の人たちである。特に驚いたのはお風呂が温泉並になっていた。(但し19時半迄)お料理もステーキがつき美味しい。夕食後の語らいはいつものことながら昔話に花が咲く。幼稚園時代の話から始まり、中学時代に砂利道を昔の大人用の自転車で小国沼まで行った話など懐かしい。21時消灯前に寝床へ。

 たっぷりと睡眠を取り、夜中の騒ぎ(蝶が岳からの下りで雪道に足を滑らし転落事故で遭難、朝3時半に捜索隊が山へ向かった。)など何も知らない。お天気が心配で窓を開けたが、太陽は望めず。6時に徳沢園の前のキャンプ場へ出た。二輪草の大群落が凄い。ハルニレの大木や桂の大木の周りも花一面。宿の企画でカメラ教室と自然教室が6時半から行われた。桜井カメラマンの指導を受ける。3箇所程構図を決めて見せてくれるが、にわか雨が降りだし、残念である。桜井氏は三鷹から今は塩尻に移住され、冬も徳澤園をホームグラウンドに写真を撮影して、絵葉書を販売していた。同室だったのを朝知り、朝食後の桜井氏との談話は上高地の花の穴場を伺い本当に一期一会と感激した。

 雨があがった。皆を蝶が岳の登山道へ案内し、イワカガミとツバメオモト・羅生門カズラ・白花エンレイソウ・エゾ紫・クワガタソウ等教えた。私の花の目的は山芍薬にある。徳沢園の前にはまだ蕾が2株、ロッジへの道を回りこむとあっ!咲いている。白い6まいの花びらが黄色いおしべとめしべを丸くやさしく包むこの雰囲気を持つ花を10株も見ることができ大満足である。花を探しながらの歩きは楽しい。紅花イチヤクソウの群落はまだちょっと蕾で目立たない。上を見上げると石楠花のピンクと、イワカガミの群落が次々現れる。明神館の前にまた見つけた。白い拳大の山芍薬6株、来年もここで咲くのを願う。明神池に入ると大きな岩魚たちの歓迎を受け、また鴛鴦のつがいも数羽泳ぎ、とても雄鳥はきれいだ。池の奥まで歩くと滝や流れの鮮烈な場所で充分マイナスイオンを浴びて戻る。お昼にビジターセンターで河童橋の喧騒を眺めながら持参の手製お握りをゆっくり食べた。午後は田代池から帝国ホテルのケーキセットを楽しみに歩く。私の上高地はいつも登山行程の往復で、田代池や帝国ホテルは始めてである。焼岳の見えない田代池は静かだ。早足で歩き、帝国ホテルのロビーラウンジでゆっくり寛ぎ、今回の旅の企画は終わる。帰りの電車の中で友は今回見た上高地の花たちの名を復習したら、20数種あったと喜んでいた姿が嬉しい。山の友カメラードとは異質の幼馴染の友に、山の楽しさや気を分けて、共にいつまでも元気でいたい。

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