2006年(平成18年)11月20日号

No.342

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
自省抄
銀座の桜
いこいの広場
ファッションプラザ
山と私
銀座展望台(BLOG)
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

茶説

ブッシュ大統領よ、何処へ行く

牧念人 悠々

 共和党は大敗した。あと任期2年となったブッシュ大統領に次の聖書の言葉を捧げる。
「人はすべて聞くに早く、語るに遅く、怒るに遅くあるべし」(ヤコブの手紙1章19節)。
人間はこの逆である。人は話を聞かないし、おしゃべりはするし、すぐに怒る。ブッシュ大統領も多分にこの傾向がある。聖書に親しんでいるブッシュ大統領にはよく理解できると思う。この中間選挙での共和党の大敗で「40年前に始まったアメリカの保守化の流に終止符が打たれた」(「ニューズウイーク」日本語版11月22日号)と指摘する識者がいる。数年足らずでアメリカ(民主党)でもフランス(社会党)でも女性大統領が出現する可能性があるところを見れば、時代の流れは中道から左の道を歩み始めたのかもしれない。だからこそブッシュ大統領は心してあとの任期をまっとうせねばならない。
 先ず敗因から学ぶ必要がある。その一つがイラク戦争。米軍の死者はすでに2800人を超える。戦争を始めて3年8ヶ月、シーア派とスンニ派の対立が激化、内戦状態になっている。戦争が長引けば、国民は戦争にあきる。死者の数が増えればなおさらである。その意味では年内にも出される、元国務長官、ジェームズ・ベーカーが共同議長を勤める「イラク研究グループ」の政策提言が待たれる。ベーカーは「米国流の民主主義がイラクのユーフラテス川のほとりに花開くと考えるべきではない」といっている(11月14日・SANKEI・EXPRESS)。イラクから即時撤退などにはならいないであろうが、厳しい内容になるのが予想される。宗教間の対立もなく内戦状態にならなかった日本でも米軍の占領期間は7年に及んだ。慌てず最後までやり遂げよ。
 もうひつの敗因がハリケーン「カトリーナ」の対応の遅れ。ブッシュは我等庶民を守ってくれない大統領ということになってしまった。今回若年層(28歳から29歳)の支持は民主党が20ポイント上回った、ヒスパニックの支持率は民主党69パーセント、共和党30パーセントであった(前掲「ニューズウイーク」より)。内政にも目を向けなければならない。来年1月には「極左派の代弁者」といわれるナンシー・ペロシが下院議長になる。議会対策に頭を悩ますことになる。忍の一字である。怒らず、しゃべらず、民主党の話をよく聞け。そうすれば意外と道が開けるかもしれない。
 対日関係はどうなるのか。むしろよくなるのではないか。日米同盟は変わらず、米国が進めている米軍の「トランスフォーメーション」も進展の度合いが遅くれるにしても、冷戦後の新たな世界戦略上進めざるをえない。民主党が極左といっても妊娠の中絶を認めることや同性婚を支持する程度であればそんなに違和感はない。中道政策をとらざるをえないブッシュ政権と安倍内閣はこれまで以上に北朝鮮の核開発問題、拉致問題など日米協調路線を強めることができる。ハノイで開かれたAPECでの日米首脳の初会合も順調な滑り出しを見せた(11月18日)。来年、安部首相が訪米するのが決まった。何時の世も時代は激変する。日米双方とも悲観からは何も生まれてこないことを知るべきであろう。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp