2006年(平成18年)11月1日号

No.340

銀座一丁目新聞

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茶説

文部省唱歌「蛍の光」と「青葉の笛」考

牧念人 悠々

 文部省唱歌「蛍の光」の歌詞が3番、4番まであるとは知らなかった。戦前でも1番と2番しか歌わなかったと思う。産経新聞「正論」で文芸評論家の新保祐司さんは当時、文部省役人が「将来国家のために心を合わせようと誓う有様を述べたもので卒業の時歌うべき歌である」という言葉を引用して『「蛍の光」は本来「愛国」の歌であった』と説く(10月18日)。
 歌詞は3番「つくしのきわみ/みちのおく/うみやまとおく/へだつとも/そのまごころは/へだてなく/ひとつにつくせ/くにのため」4番「千島のおくも/おきなわも/やしまのうちの/まもりなり/いたらんくにに/いさおしく/つとめよわがせ/つつがなく」である。
 敗戦後、占領軍の「軍国主義の払拭」「封建主義の根絶」という政策によって教科書は全面的に改訂された。「愛国」という言葉、「軍神」の伝記などが排除された。そのため「蛍の光」も昭和24年小学5年生の教科書に掲載されたのは2番までの歌詞であった。
 占領軍のやり方は徹底してる。戦前作られた映画の挿入歌まで及ぶ。たとえば、伊丹万作監督「無法松の一生」(昭和18年制作・大映京都)で小倉中学生徒と師範学校の生徒のケンカのシーンで使われた「敵は幾万」(歌・山口美妙斎・曲・小山作之助)「元寇」(歌・曲・永井建子)、さらに主人公の少年が歌う「青葉の笛」(歌・大和田建樹・曲・田村虎蔵)がカットされている。占領軍の検閲官の言葉は「アメリカ占領軍によって民主化された日本の人々に、封建時代を賛美する場面を見せたり、封建的な時代の歌を聞かせたりするようなシーン を見せてならない」であった(白井佳夫の『現代に甦る「無法松の一生」より』)。かくて日本国民から『国を守る気概』を失わせてしまった。
 これらはひとえに日本人の『精神的武装解除』を図るものであった。国際法まで犯して日本の国家改造を目指したアメリカにとっては当然のことかもしれない。ハーグ条約ではその規則の第3款の第43条には『占領軍は占領地の現行法律を尊重し』とある。国の基本法である憲法を改正するのは明らかに国際法違反である。本来は日本が独立を果たした昭和27年4月28日以降、直ちに改正すべきものであった。それが「日本の民主化」の時代の激流に流されて今日まできてしまった。戦前に帰れとはいわないが、自分の国を愛する心をはぐむのは当然ではないか。それに異を唱えるものが意外に多いのは驚くべきである。

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