1998年(平成10年)6月10日(旬刊)

No.42

銀座一丁目新聞

 

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茶説

気楽な「新聞休刊日」

佐々木 叶

 「新聞の休刊日が多いように思うなあ。何か基準でもあるんですか」。行きつけのコーヒー店の主人が、面白くなさそうな顔で、さらに“止(とど)め”の一撃をつけ加えた。「休刊日の分だけ、購読料を値引きすべきだ。新聞も役所並みに勝手だね」。

 「新聞社も役所並み」とは、痛い言葉である。勝手に旗日(祝日)をつくり、勝手に休む。庶民の目から見れば、新聞社も役所並みに映るのかもしれない。

 以前にくらべて、「新聞休刊日」を告げる社告もあっさりしたものだ。「○○日を休刊とします。朝刊は休ませていただきます。ご了承ください」。「休刊」という既成事実を積み上げれば「ご了承ください」の一言ですむ、と新聞社は思っているのだろう。「勝手だねえ」と読者が思うのも無理からぬことだ。

 たしかに働く側からすれば、休みが多いほうがいい。まして、新聞販売店の従業員は、年々、パートがふえ、いまでは全従業員の46.2%が女性、それも主婦に負うところが多い。朝な、夕な、新聞の配達も大変である。配達中のバイク事故もあとを絶たない。働く人に休息を与えることは当然、ともいえるだろうが、「休刊」の理由は、ただそれだけなのか。新聞社にとって、用紙代も印刷、発送費も節約できる。年額にすれば莫大だ。働く人を休ませるとの名目で、しっかり稼いでいるのは、ほかならぬ新聞社本体ではないか。

 戦後しばらく、新聞の「休刊」は元旦と春秋二回のお彼岸の中日ぐらいだった。日曜の夕刊は休みが定着していたものの、やたら休刊日がふえると、読者は無休のNHKにすがりつくしかない。新聞の平均閲読時間は39分、無購読44.8%、まじめに読む人は26.2%という。新聞が勝手に休んでいるうちに、読者の新聞離れがふえてゆく。片や「拡張」、片や「休刊」。新聞とは気楽な稼業である。

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