原作・福井晴敏、監督・坂本順治の映画「亡国のイージス」を見る(6月20日・日本記者クラブ)。戦後60年、日本のあり方について考えさせられた。韓国では自衛隊の再武装を促すものだとしてこの映画に対日工作員の役で出演したチェ・ミンソを第4回映画祭の閉幕式の司会を降板させる事態が起きた(昨年9月・朝鮮日報)。筆者は原作も面白く読んだし、映画も興味深かった。
映画の筋はテロリストによって占拠された最新鋭のイージス護衛官「いそかぜ」が東京首都圏を一瞬で壊滅できる特殊兵器「グソー」を東京に向ける。政府に突きつけられた要求はのめそうにない。残された時間は10時間。それを「いそかぜ」の先任伍長千石恒夫(真田広之)と一等海士(防衛庁情報局員)如月行(勝地淳)の死闘で食い止めるというもの。
「いそかぜ」の副長、宮津弘隆二佐(寺尾聡)は防大を出た息子が情報戦の犠牲となったことから国への反逆に走る。幹部乗組員らはかっての宮津二佐の教え子で、宮津を父とも慕う。駆けつけた護衛艦「うらかぜ」をミサイルで情け容赦なく撃沈する。「先制攻撃しなければこちらがやられてしまう。戦争はこうゆうものだ」という。「うらかぜ」の戦い方は日本の現在の対応をそのまま示している。相手が仕掛けない限りこちらから手出しをしないと言うのが政府の考え方のようである。これは戦争の実態にそぐわない。たとえば、相手が日本に主権を侵害した場合、最悪の時は撃沈もあり得る。先に中国の潜水艦が日本の領海を侵犯したが、相手がこちらの警告を無視すれば、撃沈してもかまわない。追尾して相手が領海を去るまで見守るというのは恐らく日本だけであろう。
テロリストの首謀者は祖国を絶望した某国対日工作者であり、FTG三等海佐溝口哲也/ヨンフア(中井貴一・映画ではチェ・ミンソの兄))。宮津二佐を仲間に引き込む。「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その
弾頭は通常に非ず」の脅しは心に留めなけなければならない。今北朝鮮が核兵器の開発を進め、ミサイルの射程は日本全土に向けられている。「いつでも日本を火の海にしてみせる」と豪語している。この映画のシーンは現実そのままである。国を守とはどういう事か。日米同盟の意義はなにか。映画はそれを真剣に問うている。 |