2004年(平成16年)6月10日号

No.254

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(17)

―キングカメハメハのV― 

  今年の第71回ダービーは、安藤勝己騎手騎乗のキングカメハメハ(栗東・松田国英)が優勝し、数々の記録を打ち立てた。01年生まれ9015頭の頂点に立ったのだから、ダービー制覇の価値の大きさを、改めて知らされる思いがする。記憶に残すためにも、記録を整理してみよう。
 まず、勝ちタイム。2分23秒3はダービーレコード。今回のタイムは東京2400のコースレコードでもある。ちなみに過去10年のダービーの勝ちタイムは、速くても2分25秒台(4回)で、99年アドマイヤベガの2分25秒3が最速だった。これを2秒も更新した。東京の馬場状態がよかったとはいえ、これは驚異的だ。それにしても、今の東京は速いタイムが出る。同距離の青葉賞ハイアーゲームの勝ちタイムは2分24秒1。このタイムにも驚かされたが、これをさらに0秒8も上回ったのだから、ダービーはスピード決着となった。
速いタイムになった理由には、ハイペースも挙げられる。1000メートル通過57秒6のハイペース。このハイペースに呑み込まれ、前を行く馬はみな潰れてしまった。そのため5着までを差し、追い込み馬が占めた。
 ダービー出走のステップとしては、皐月賞出走が一般的で、皐月賞組が多く活躍してきたが、別路線からの挑戦、優勝も異例だった。NHKマイルC(1600)からの挑戦は3頭目だが、ダービーにも勝ったのは初めて。02年のタニノギムレットは、NHKマイルC3着だった。松田国英厩舎はこのステップが好きらしい。それはともかく、ダービー2着のハーツクライは、皐月賞惨敗(14着)後に京都新聞杯(1着)を使うという変則ローテーションで、このようなケースも異例といえる。
 それにしても、キングカメカメハは強かった。前走NHKマイルCで強烈な印象を与えたが、ダービーではさらに強さを発揮してみせた。春になってこれほど急速に力をつけた例は珍しい。他馬との差は、成長力の差といってもいい。ハーツクライ(2着)やハイアーゲーム(3着)も力をつけてはいたが、キングカメカメハの強さだけが目立った。ところで、この強さは世界のレベルではどうだろうか。ヨーロッパやアメリカへの遠征プランは伝えられていないが、まずはフランスあたりへ遠征し、ヨーロッパの強豪と戦って欲しいものだ。
 国内の話題としては、キングカメカメハの優勝で、父キングマンボが注目されることにもなった。キングマンボ産駒としては、GT勝ちのエルコンドルパサー(NHKマイルC、ジャパンカップ)がいるが、ダービーなどのクラシックは初めて。今後、キングマンボ産駒の評価は上がるだろう。6月19日から、早くも来年のダービーを目指して2歳馬がデビューする。キングマンボ産駒に、第2のキングカメカメハはいるだろうか。

( 新倉 弘人)

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