2004年(平成16年)4月20日号

No.249

銀座一丁目新聞

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安全地帯(74)

−信濃太郎−

ウイーンのバス・ストップ
 

 友人の霜田昭治君が「世界の色/日本の色」写真展(4月8日から13日まで、新宿野村ビル・ギャラリー)にウイーンの写真「バス・ストップ」を出品したというので出かけた。霜田君の写真はいつみてもセンスが良く、切れ味が鋭い。。彼の写真には「人間」が写っている。展示された114点の写真のなかで「人」が写っているのは僅か6点であった。他は風景写真である。「絵葉書みたいな写真をとるな」。撮るなら生き生きした人間の生活を映し出せというのが私の持論である。新聞で育ったせいであろう。
 霜田君の写真はキャリアレディで人気のドイツ・ブランドESCADAの店を背景に、バスを待つ為に所在なさそうにしている客が写っている。ベンチに3人の女性と少し離れて一人の男性が座っている。幾何学的な構図の中に3対1の人の存在が絶妙である。意識していなかったであろうが、ワルツの三拍子の感覚である。山本直純さんは日本人的感覚では「一、ニ、三、一、ニ、三」だが、本場ウイーンの感覚は「ズン・パッパ」の部分のッがほんのちょっと延び気味で、また最初のズンとすぐ次のパの部分がつまり気味であると解説している。この写真は一つの音楽の世界を表現していると私には思える。エスカダがあるグラーベンは賑やかな通りだが、どことなく翳りを感ずる。それがウイーンらしくてよい。
 ウイーンには平成6年5月末から五日程滞在した。樂友協会ホールでウイーン少年合唱団の歌声を聞き、フォルクスオーバー劇場でモ−ツァルトの歌劇「魔笛」をみた。仕事は世界の新聞人の前で「スポニチはいかにして読者を獲得したか」というテーマで演説をすることであった。しんどい思いをしたが後はウイーンのよさを十分満喫できた。その時の講演の結論は「女性を味方にし、その力を生かす新聞は必ず伸びる」というものであった。

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