2003年(平成15年)3月1日号

No.208

銀座一丁目新聞

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安全地帯(38)

−感動的な記事をトップで扱え−

−信濃 太郎−

 このところスポーツ紙は面白くない。連日ヤンキースの松井秀喜選手の記事を一面ットップに据えている。確かに松井選手は 沢村栄治投手、長島茂三塁手、王貞治一塁手と並べてもよいほどの選手だといわれている。それはわかるにしても松井選手にたいしたニュースがないとき、無理して扱う必要はないであろう。スポーツ紙の得意の分野である芸能、映画、演劇、落語、風俗などで時代にふさわしい感動的なドラマがいくらでも起きている。それに目をつけたらどうか。
 朝、読者が読んで感動し、元気が出るような記事を一面に出すべきである。たとえば、その意味ではラグビー日本一に輝いたNECを一面にもってきてもよかったのではないか(2月23日・国立競技場・観客2万1000名)。私はこの試合をテレビ観戦し翌日各新聞を読んで感動した。戦前、NECは圧倒的に劣勢が予想されていた(サントリーに8連敗中)。私自身もサントリーが三連覇するであろうと思っていた。それが後半33分から3連続トライで36ー26と逆転勝ちした。とくに後半20分にいつもサントリーにトライを重ねられるので、試合前に決めていたように、みんなで「チャレンジ」「チャレンジ」と口に出して気持ちを高めたという。読んでいて胸がジーンと来る。今期の成績9勝6敗1引き分けである。史上ワースト記録。その泥沼から這い上がり「FWで相手を寄せてからワイドに攻撃する」戦法をかたくなに守り通した。東日本リーグ7位の優勝は始めてである。記録づくめの優勝であった。30連勝のサントリーのV3を止めたのである。見事というほかない。NECの太田監督に絶大の拍手を送りたい。
 一方、サントリーに心のおごりはなかったか。相手を甘く見たのではないか。今季のNECとの対戦成績は東日本リーグで33ー20、全国社会人大会で35−23でいずれもサントリーが勝っている。勝負の世界の怖さがここにある。
 西垣浩司NEC社長は「ラグビー部がみせてくれたひたむきさ、闘争心、最後まで諦めない姿勢は社員全員に感動とともに勇気をあたえてくれた」と語ったが、観客も読者も同じ感想を持ったはずである。読まれる記事とはこんな記事をいうのである。デフレでとかく暗いニュースばかりのとき、実に爽やかな若者達の活躍ぶりであった。このようなスポーツ記事のよさが何故新聞社のデスクにわからないのか疑問に思う。

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