日本はどうも情報を大切にしない癖がある。とりわけ防衛、治安関係の情報はゆるがせに出来ないはずである。大東亞戦争でアメリカに徹底的にやられたのにまだ懲りないらしい。新しい型の戦争・テログループとの戦いは『情報戦争』の一面をもつ。
まず、教訓的な例からのべる。1945年(昭和20年)2月11日のヤルタ会談のあと、スエーデン大使館付武官であった小野寺信少将(陸士31期)から『ソ連はドイツの降伏より三ヶ月を準備期間として、対日参戦する」と暗号で東京に打電したが、無視された。ドイツの全面降伏が5月8日、ソ連の対日宣戦布告が8月8日であった。ヤルタ会談通りであった。ソ連の対日参戦の密約に関する情報である。このような情報は簡単に手に入るものではない。この情報を真摯に受け取り、それなりの対応をしておれば、敗戦直前のソ満国境の状況はまた変ったものになっていたであろう。
最も、大本営情報部ソ連課では各種情報からソ連の参戦は8、9月と判断していたという。それにしては、あまりにも無策であるというほかない。
堀栄三さん(陸士46期)の『大本営参謀の情報戦記』によると、『昭和20年7月16日ニューメキシコ州で新しい実験が行われた』という僅か2行の外電は、他の何かの諜報との関連付けから原爆という字が出てきたに違いないと記している。
アメリカの原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」が組織されたのが1942年6月である。原爆が完成したのは7月21日、トルーマン大統領はポツダム会議に出席中であった。その時、アメリカはすでに日本へ原爆投下をきめていた。ここに2行の外電が持つ重大な情報の意味がある。情報とは怖いものである。
テロ対策支援法によって海上自衛艦艇がアラビア海に出動したが、イージス艦を出した方がよかったと思う。イージス防空システムをもっているからである。このシステムは高性能のレーダーとコンピュータの組み合わせで、360度全周囲の半径150キロ以内に出現した10個以上の脅威に対し、自動的に対空ミサイルを発射し、追尾撃墜する。現在4隻を保有している。アメリカ以外イージス艦を持っている国は日本だけである。米海軍の空母の防衛には大いに役に立つ。テロ撲滅のためにともに戦うというなら、燃料補給もいいが、イージス艦派遣の方が同盟の絆を強めるのに効果的である。このような実態をもっと国民に情報として流したらよい。戦略的に情報と取り組む姿勢に欠ける。さらに、日本にはいまだに、アメリカのCIA、ドイツのゲーレン機関のように統合情報機関がない。情報こそ最高の戦力であるのを、先の大戦の反省から嫌というほど知ったと思うのだが・・・
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