第14回東京国際女性映画祭で上映された松井久子監督の「折り梅」を見て、友人がとても参考になったと喜んでいた。「折り梅」は老人介護を扱った映画で、同居を始めた夫の母親の痴呆が徐々に進んでいくことから起る嫁と姑、夫婦間、子供たちとのさまざまな葛藤が描かれている。
夫に早くに死に別れ、4人の男の子を女手ひとつで育てた気丈な母(吉行和子)。その母の痴呆を認めたくない息子は、介護に疲れ果て施設に入れたいと願う妻に相談を持ちかけられても「君がいいと思うなら・・・」と肝心なところで逃げてばかりいる、そんな気弱な身勝手な夫役をトミーズ雅が好演している。
施設へ送って行く道すがら、実の息子さえも知らない姑の過去、幼い日の生母との別れや若い時の苦労話を淡々と語るのを聞いて、同じ女として、母として、また子どもの立場として姑を愛しく思い、もう一度がんばってみようと決心する嫁。
松井久子監督は平凡な家庭の当り前の暮らしの中で、与えられた使命に雄々しく立ち向かってゆく強靭な女性を描きたかった、と語っている。その役どころを原田三枝子は見事にこなしている。
姑と参加したある集会で、「今までお姑さんを何回褒めてあげましたか」と問われて、咎めたり、怒ってばかりいたことに気がつく嫁。誰でも褒められて気分を害する者はいない。特に子育ての場合は頭ごなしに叱らないで、先ずいい所を認めて褒めてから、注意すべきことをその場できちんと伝えることだと聞いたり読んだりした。その割合は7対3ぐらいが適切だと。年を取ると子供に還ると言うから、同じことなのだろう。
友人の話では、この映画を見た翌日に母上がサラダ用の人参を綺麗に細切りしたのを見て、お孫さんがそれを褒めると、そのことを大変喜んで、何回もそのことを言っておられたとか。また、昔の話の中で自分が行ったこともない所でも、想像を膨らませているうちに行ったように思って話をするのを、今まではいちいち訂正していたけれど、他に害のない話なら咎めたてせずに、「それで誰と行ったの?」と話を促すようにしている、と。
私の両親はもう20数年前に他界している。夫の母が90歳で未だ健在であるが沼津にいて兄夫婦と同居しており、父が他界した時も東京にいた私は介護に携わっていない。経験がないまま、自分が介護される側に回りそうで不安この上ない。呆けは神様の贈り物とも言うが、出来ることなら避けたいので、指を使い、ない知恵を絞って駄文を書き、これからも益々好奇心を旺盛にしてゆこうと思っている。
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