花ある風景(73)
並木 徹
アフガニスタン戦争はどうなるのかとよく聞かれる。新聞を見ると、「出口が見えない」とか「泥沼化する」「報復は報復を呼ぶ」といった記事をみかける。なにごとによらず、先を読むのは大切である。ここで参考になるのは、1979年12月のソ連のアフガン侵攻である、ソ連軍はアフガンのゲリラ戦法にてこずり、1万3000人の戦死者を出し、敗退している。米英軍が制空権をとったとしても、手ごわい相手であるのはたしかである。しかし、今回の戦争はソ連のそれと大きくことなる。
まずその目的である。ソ連の場合、アフガンに社会主義政権の崩壊を防ぐための戦いであった。この戦争はテログループ対米国を主力としてテロと戦う国々の間で行われている。目的はウサマ・ビンラディンとその組織「アルカイダ」を撲滅するにある。罪もないアフガニスタンの国民が相手ではない。あくまでもテロを根絶するにある。その目的が達成されるまで戦争はつづく。長期戦になるのは間違いない。
だからこそ、多くの国々が立ち上がった。軍事行動に直接参加するだけでなく、日本のように後方支援する国もある。情報交換、テロ資金の凍結などにも力をあわせている。これは今後、新たな国際連帯を深めるのに役立つであろう。
問題は対ゲリラ戦である。アメリカにとって、第二次大戦の島嶼作戦、ベトナム戦争、ソ連のアフガン戦争などの戦訓が生かされるであろう。おそらく、空爆のあと、いくつかの拠点づくりのために、アフガンに地上軍が入る。その拠点を基地にテロの根拠地をつぎつぎに、たたくという段取りになる。けして面の戦争にはならない。あくまでも点の戦いである。北部同盟も味方にできるし、タリバンの内部分裂も期待できる。泥沼におちいることはない。テロをかくまうタリバンを制圧したあとのアフガンの国づくりをしっかりかためる方が事態を早く解決する早道かもしれない。情勢はその方向にゆきつつあるのはなによりである。
アメリカは湾岸戦争の際、60万の予備役軍人のうち20万人を動員、サウジアラビアなど後方地域の勤務につけた。今回は5万人を動員、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルスなどに配備したにとどまる。
また、テロはアメリカだけでなくどの国でも起こりうる。それが新しい戦争の様相である。アメリカだけでなく、各国の国民のテロと戦う決意と覚悟が強く要請され、しかもそれが持続されねばならない。そういう意味では困難な戦争といえよう。 |