2001年(平成13年)6月1日号

No.145

銀座一丁目新聞

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花ある風景(59)

 並木 徹

 陸士の同期生 相野田 悟君からこのほど手紙をいただいた。東映にいただけに会うと映画の話になる。実に鋭い批判をする。
 手紙には岩波ホールで上映中の「山の郵便配達」(7月上旬まで)の映画批評が書かれていた。4月7日から始まったこの映画は連日満員である。女性だけでなく若者、中年の男性たちも押しかけている。
同ホールの総支配人高野 悦子さんは「はじめから大入りと予想しておりましたが、おじさん族まできていただいてびっくりしております」といっている。
 映画の主人公は郵便配達の一家である。ひたすら仕事に打ち込む父(トン・ルゥジュン)、無口で留守がちな父に反発する息子(リィウ・イェ)、父を支え息子をやさしく包む母(ジャオ・シィウリ)それにいつも配達に同行する犬が登場する。
 郵便配達を中心として、家族の生活が美しい緑の自然、夏祭り、山村の村人との交流の中で生き生きとえがかれる。父親の生き方に文句なく感動する。昔の日本にあった父親像がここにある。息子は父と行動をともにして「山の郵便配達」の仕事の尊さとつらさを感得する。ジーンとくるものがある。
 相野田君は手紙に書く。
 フォ・ジェンチ監督の淡々と描く映像はワンショット、ワンショット丁寧に撮り心のこもった作品になっております.農村(僻地の)における父子の叙情詩を見事にうたいあげていると感じました。カメラは夕景と山中のこもれ陽を狙ったショット以外は大半が曇天の撮影で、それが実に落ち着いた画面に仕上がっています。またバックグランドに流れている音楽も美しく、画面とハーモニーが保たれて心にしみます。
 峠で息子が紙ヒコーキを飛ばす何気ないショットの中に父子の情を象徴しているかのごとき未来像を感じさせます.また寝床での父子の対話も感動的です。
 巧みな表現技術として息子の成長と家族の絆を幼年、少年、青年と同一場所で再会する姿で表し同時に時間経過を説明している場面です。犬の使い方も巧妙です(出演者並みの或いはそれ以上のギャラを取る犬だとおもいます)。
 相野田君はきめ細かく映画をみている。なるほどプロだと感心する。

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