2001年(平成13年)3月10日号

No.137

銀座一丁目新聞

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茶説

日本の興廃この一戦にあり

牧念人 悠々

 「敵艦見ゆとの警報に接し連合艦隊は直ちに出動しこれを撃滅せんとす本日天気晴朗なれど波たかし」これは連合艦隊参謀、海軍中佐、秋山 真之が大本営に送った有名な電報である。「公刊戦史」にはこの日の気象を「海面濛気あり、展望甚だ狭くして五、六海里に過ぎず且つ西南西の風あり、その力四乃至五に達し波浪又高くして艦隊の航海頗る困難」と表現している(田中 宏巳著「東郷 平八郎」ちくま新書)。
 いまの日本丸も同じような気象状況におかれている。船長は船をどの方向へもっていこうとしているのか不明確である。政治は混迷、景気の動向も悪化のきざしをみせている。「その展望甚だ狭し」で、一寸先も見えない有様である。
 秋山参謀は「出動して敵を撃滅せんとす」と目標を明らかにしてT字戦法をとった。日本丸は右往左往してしかも打つ手も間違えている。
 先に日銀は二度に渡り公定歩合をさげた。明らかにミスで効果はなかった。何のための引き下げか疑問に思う。国民の貯蓄800兆円あり、仮に先進国なみに5%とすれば、年に40兆円の利息が生じる。国民はそれだけ損をしている計算になる。1995年9月から0.5%だから200兆円以上の損害を国民に与えていることになる。公定歩合を引き下げると、日本の資金は金利の高い海外へ流出するばかりである。
 時事評論家、増田 俊男さんは「アメリカ株の暴落を回避するため、日本から資金を導入する政策を取っているから当分、為替はドル高になる。日本に量的金融緩和と内需拡大を執拗に求めるのはそのためである」といっている。
 そういえば、プラザ合意は金利引下げによって、日本はドルの為替相場を支え、輸出で稼いだドルを米財務省債権に投資させられた。おかげで日本はバブルに見舞われた。日本はまた第二のプラザ合意の道をあゆもうとしているのか。バブルの二の舞はゴメンだ。
 むしろ金利は上げるべきで、先進国なみにしたらどうか。そうすれば消費は上向くであろう。今でも日本の消費は年間300兆円でGDP比では世界一だそうだ(増田俊男論文No.122 3月5日号)。すべてアメリカの言いなりになる必要はあるまい。日本の国民のために独自の判断して、YES、NOをはっきりすべきであろう。日本の財政状況は危機的である。660兆円の負債をかかえ、急激な高齢化による年金財政の逼迫、医療保険財政など問題は山積している。日本丸はどこへ行くかと、国民はみんな心配している。
 東郷 平八郎元帥は全軍に「皇国の興廃この一戦にあり 各員いっそう奮励努力せよ」の信号を掲げた。いまの日本丸の船長にそんなリーダーシップありやなしやと問うのは酷なことであろうか。

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