2001年(平成13年)3月1日号

No.136

銀座一丁目新聞

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茶説

座右の銘に回天の力あり

牧念人 悠々

 「愛語よく回天の力あり」とは道元(鎌倉初期の禅僧・1200−1252)の言葉である。私流に解釈すると、人を励まし、共感させる言葉は元気を出させ、生きる力を与える。時には時勢を一変させる力をも生むということになる。本義とそうかけはなれていないであろう。
 中学生のころ、寄宿舎の壁に「少年老い易く 学なり難し」「捲土重来」を張り勉強したものである。幾度となく徹夜勉強をしたが、集中できたのは張り紙のおかげである。事件記者になった時には(昭和25年−同29年、警視庁記者クラブ)「安心はもっとも安価な敵である」を心にきざみこんだ。特種を取ったと思って安心していると、決まって他社に抜き返される失敗をしたからである。
 もともと、軍人を目指したから「常在戦場」の気持ちは忘れなかった。「為さざると遅疑するとは指揮官の最も戒むべき所とする」(作戦要務令)は部下を持った時、大いに役立った。
 ブッシュ新政権の閣僚の合言葉は「名誉と威厳」とか。クリントンと違って「力の論理」を押し立てるブッシュ大統領に似つかわしい。早速、英国と共同して、イラクの軍事施設空爆を実施した(日本時間2月17日)。
 先人は至言を残している。人を相手にせず天を相手にせよと説いた西郷 隆盛に「敬天愛人」がある。硫黄島で玉砕した栗林 忠道中将は「意志の鍛練」を息子に書き送った。
 座右の銘、モットーは真摯に生きようとする人に励ましとなり、力となる。今の若者がすぐ切れたり、無軌道に走ったりするのは「座右の銘」を知らず、持たないからであろう。
目的喪失の時代であり、理想を失い、哲学なき時代かもしれない。
 「明日ありと思う心のあだ櫻 夜半に嵐の吹かぬものかは」(親鸞)一刻、一日はきわめて大切である。良いことは実行だ。
それを忠実に実行する人に座右の銘は時には回天の力となろう。

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