2000年(平成12年)12月01日号

No.127

銀座一丁目新聞

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茶説

歴史を楽しもう

牧念人 悠々

 ことしもあと一ヶ月となった。何かとせわしない。20世紀の最後だ。こんな企画はいかがであろうか。題してニュース映画が語る21世紀へのメッセージ「ニュース映画の会」。うまくいけば、12月28日から31日にかけて東京・新宿武蔵野館で上映される。
 ニュース映画といえば、戦前は専門館もあったほど人々の関心は深かった。テレビのない時代、生々しい現場、とりわけ、戦場、事件、災害などのシーンはインパクトがあった。戦後、テレビの出現で、はじめは「テレビニュース」として15分間放映されていたが、報道番組の充実とともにいつのまにかきえてしまった。いまの若者は「ニュース映画」という言葉を知らないかもしれない。
 温故知新という。歴史を忘れるものに明日はない。歴史は面白いものだ。読めば読むほど味がでてくる。この際、ニュース映画だけでなく、歴史書をひもとくことをすすめたい。
江戸学は21世紀のバイブルと本欄(10月20日号茶説)に書いた。朝日新聞(11月24日)が対馬藩の儒学者雨森芳洲(1668−1755)の事を取り上げていた。「お互いに欺かず争わず、真実の心をもって交わる」を本旨として、朝鮮と接した事を知り、ますます江戸学の必要性を痛感した。
 雨森より二歳上の儒学者荻生徂徠(1666−1728)にも面白いエピソードがある。
 徂徠が将軍に謁見した時に、朝鮮修好に関する機密のことを相談された。将軍の前で談論自若として傍若無人の有様であった。侍臣がみかねて「あまり声が大きい」ととがめたら徂徠は平気な顔で「いかに声が大きくても朝鮮までは聞こえまい」といったそうだ(勝部真長編「氷川清話 勝海舟自伝」より)
 外交について勝海舟は雨森と同じようなことをいっている。「外交の極意は『正心誠意』にある。ごまかしなどをやりかけると、かえって向こうからこちらの弱点を見抜かれるものだよ」(前掲書より)
 師走のひととき、フイルムで歴史を感ずるのも一興だと思う。

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