2000年(平成12年)11月20日号

No.126

銀座一丁目新聞

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茶説

政治の流れは変った

牧念人 悠々

 ここへきて政治の流れは変ったような気がする。流れを変えたのは、作家田中 康夫さんの長野県知事誕生である。作家知事の出現は明らかに「既成政治」への反発であり、県民の地方政治への不信の表明であった。国、地方を問わず、漠然とした政治への不満は底流としてうずまいていた。
 しかも、田中新知事はやることがスマートであった。登庁早々無礼をした県局長に思いやりを見せたり、現場に足を運び、公共事業を見直したり、県民には新鮮にうつる。知事が変れば、県政が変る可能性は十分ある。あとはどれだけ実績を残すかだけで評価が決まる。しかし、それには県民の支援がなければ、ならない。
 その延長線上で国の政治を見るべきだと思うのだが・・・今回の加藤 紘一元幹事長の造反は単なる権力闘争とは思えない。いまの国の政治のあり方に極度の危機感を抱いたのではないか。構造改革に本腰をいれず、景気にこだわって財政再建に踏み込まず、流れにまかせている。国民は森政権に7割を越える人が不支持を表明している。国民は危惧を抱いている。財政を例にあげると、国と地方の長期債務は今年度末には約650兆円近くになる。日本のGDPをはるかに越える数字である。このままではとんでもないことになる。
 加藤さんの造反は時代の政治の流れであるとみる。本来なら、来年夏の参院選挙ではっきりした形でくるのを待てばよいのだが、政権与党だけに危機の深刻さがひしひしとわかり、いま立たなければ、内部から自民党を変えねばいけないと、決起したのであろう…と推測する。
 加藤さんは11月9日夜の政治評論家グループとの会合で「森に内閣改造なんかさせない」と言ったとTVも新聞も伝えるが、それはきっかけにすぎない。
もちろん、加藤さんも首相の座につく事を熱望しているに違いない。とりあえず、財政再建、構造改革などの政策を本格的に取り組む政治へ流れを変えてゆきたいのだと思う。
 野党提出の内閣不信任案に同調するのも目的達成の一つの条件にすぎない。この不信任案提出のあり方が今までと違う。野党が出す前に、与党の有力幹部が可決のための条件を整えていることだ。いままでと明らかに違う流れであると観測、期待していたところ、土壇場で裏切られてしまった。加藤派と山崎派主流は妥協、本会議を欠席をきめ、不信任案は否決されてしまった。もちろん、森首相はまもなく退陣という暗黙のシナリオを認めた上の決着であろう。今回の造反はそれなりの政治的インパクトあったにしても、旧態以前の決着に国民の失望は大きいものがある。それでも、栃木県知事選の結果をみても政治の流れは変れつつあるといえる。

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