2000年(平成12年)10月1日号

No.121

銀座一丁目新聞

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横浜便り(12)

分須 朗子


 「本気」について考えていた。

 何時でも本気を重ねているつもりだと、本気の状態がもうよく分からなくなってきて、“本気出せよ”と自分に言いたくなることがある。
 「嘘気」について考えてみた。
 本気と裏腹の嘘気を持ち合わせてる方が、よっぽどホットな感じがする。嘘気の存在が、本気を確証しているから。

 「本気」の映画を見た。

 素晴らしく秋晴れの、ある日のこと。物思いが似合う季節だけれど、思考のし過ぎで感情が凍ってしまっていた。
 映画館へ行こう。
 こんなときは、爽やかな青空を無駄にして、暗闇で一人、大画面をぼけっと見つめていたい。恋や愛の文字がタイトルに付く映画が見たい。さらに、好きなヒーローやヒロインの笑顔が見れたらいいな。
 ・・・ヒュー・グラント。<恋するための3つのルール>
 映画館を出ると、空はまだ明るくてまぶしくて、違和感を覚える。空に西日がかかる時刻まで、どこか別の世界にいたいな。
 もう一軒、映画館へ行こう。
 こんなときは、シンプルな映画がいい。微に入り細をうがつようなことにはならない骨太のストーリーがいい。
 ・・・ホワイトアウト。<WHITE OUT>

 2つの映画とも、随分に大らかな物語と展開で、“細かいことは言いっこナシ”の陽気なムード。いずれも、大筋としては、ショックが「本気」を生んで
いる。
 <恋する>ヒーローは「死ぬほどの本気」を着実に言動につなげている。本気だから、恋人と結ばれるために何があっても怖くないそうだ。無謀な本気のせいで不条理な目に次々と遭遇していくのだが、「本気だから(恋人のために)死んでもいい」と言い切る。
 <W.O>ヒーローは「本気で死にそう」になっている。自分を守るための焼けっぱちが闘う本気につながり、その本気が人を救うことに。本気のきっかけは「(同輩と)約束したんだ」との想いだが、実際は、死に直面して捨て身になって初めて、本気が発動した感じだ。
 
 それにしても、呑気になりたくて映画館へ出かけたはずなのに、あああ、結局、思考のアキ。映画作戦不成功に終わる。



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