2000年(平成12年)9月1日号

No.118

銀座一丁目新聞

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茶説

大木は腐っている

牧念人 悠々

 外国で働く日本人が肩身の狭い思いをするテレビ映像がある。不祥事を起こした企業トップが深かぶかと頭をさげるシーンである。日本を優秀な国と思っている国はすくなくない。その期待を裏切り、信用をそこなうぶざまさにはふつふつとした怒りがこみあげてくる。
 三菱自動車工業(東京・港区)の「クレーム隠し」には言うべき言葉を失う。1977年9月から20数年にわたってクレーム情報を二重管理し、運輸省に隠蔽、虚偽報告を行っていた(8月23日毎日新聞)。
 企業倫理はどこへいったのか、社員の中に正義の士はいなかったのか。運輸省の調査が内部告発から始まったというのが少しの救いである。「クレーム隠し」が事故につながることは車の製造にかかわる社員であればハダでわかるはずである。これでは大企業も名ばかりで中味は腐っている。昨今の社員には愛社精神は持ち合わせないと聞くが愛社精神とは社内の不正をかばいだてすることではなく、むしろ積極的に不正をただし、会社が健全に発展するのに職場、職場で力を尽くすことをいう。
 車に対するクレームがあっても別に体裁の悪いことではない。むしろ隠しだてする方が悪いだけでなく、重大な事故をおこす恐れがある。現に事故はおきている。クレームに対する対策に数億かかったとしても、失った信用はお金で買うことは出来ない
 悪事は必ずばれる。隠し通せると思っている方がどうかしている。隠している期間が長ければ長いほど信用回復の期間も長い。昔の人は人が見ているところで善いことをするのは当然だが、人が見ていないところでも善いことをせよと説いた。現代では人前でも善いことをする人は少なくなった。まして人の見ていないところでは悪いことをするのがあたりまえと思っている。
 これでは今後もテレビで企業トップが謝罪する姿をしばしば見るようになるであろう。

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