韓国と北朝鮮による「南北共同宣言」のニユースを聞いてアラン(フランス)の言葉を思い出した。
「誰でも求めるものは得られる。そして欲しいものはすべて山と同じようなもので、私たちを待っており,逃げてはいきはしない。だがそれゆえ、よじ登らなければならない」(加藤 邦宏著「アランの言葉」PHP研究所刊)
南北に分断されて55年、その統一は両国民の悲願である。1972年の「7・4南北共同声明」,1991年の「南北基本合意書」と統一への動きがあった。この間爆弾テロ、小型潜水艇の侵入などさまざまな出来事があって挫折した。
求めるものは「なんとしてもよじ登らねばならない」。南北首脳会議。統一問題専門家と自負し太陽政策を掲げる金大中大統領がいたからこそ実現したといえる。92年のときも韓国大統領と金日成主席と会談の機会がおとずれたが、相互訪問の約束がとれず,不発に終わっている。ともかく「統一の自主的解決」など5項目の文書に両首脳が署名した。この歴史的意義は大きい。
統一実現までにはかなりの紆余曲折があろう。思わぬアクシデントがあるかもしれない。金大統領は平壌に到着したさいの声明の中でつぎのように述べている。「半世紀の間、積もった恨(はん)を一度に解く事は出来ないでしょう」
恨(はん)は日本人が考える恨みよりはもっと深い意味がある。分断55年の間に朝鮮戦争があり、同じ民族が血で血を流し,殺しあった。出来事が起きるたびに、ののしり、憎しみあった。お互いの溝は深くなり、垣根は高くなってしまった。38度線の恨みは限りなく深い。この恨を時間をかけて溶かしていくほかあるまい。離散家族の再会、経済、文化などの具体的な交流を積み重ねてゆかねばならない。
東西ドイツの統一と違って、韓国側に相当な負担がかかるのは間違いない。国民総生産にしても韓国と北朝鮮では問題にならないし、人口も南の4600万人に対して北は2200万人である。鉄道、道路、通信、港湾などのインフラの整備もやらねばならない。アメリカ、中国、ロシア、日本などと協調しながら、南と北が平和共存のうちにことをすすめてゆけば時間がかかったとしても統一の道は開けるであろう。
韓国駐日大使が日本記者クラブでの講演会で質問に答えて面白い話をしている(4月26日)。
高麗大学平和研究所が西ドイツのブラント元首相を講演に呼んだ際、ブラントさんに「統一はいつなんでしょうか」と質問したところ、「それは歴史の神が助けてくれても8年ないし10年かかるでしょう」という答えであった。ところが、彼が帰って8が月で統一されてしまった(1990年10月)。ドイツの代表的な言論人であるテオ・ゾマーさんは「我々ドイツ人が統一を作ったのではなく、統一がやってきたんだ」(we
didn't make it happen, it happened to us)といっているという。韓国の統一も「it
will happen to us」だと思います。果たして、両国の統一は・・・二国二制度、一国ニ制度にしろ両国民の努力と実行力で統一がやってくることを期待したい。