2000年(平成12年)6月20日号

No.111

銀座一丁目新聞

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追悼録(26)

 なき高岡 雨星さんの書展が弟子たちの手で東京・銀座の画廊で開かれる(6月21日から28日まで、中央区銀座8−11−13 山田ビルB1アトリエTK)。「銀座一丁目新聞」の題字は雨星さんの書である。ホームページを開設する際、お願いしたところ,縦書き,横書きものを五、六枚書いていただいた。そのうちの一枚である。

 弟子たちでつくる「雨星会」は平成8年高岡さんの書とその人柄にほれ込んだ人たちでつくられた。今回は三周忌にあたり、雨星さんの小品ばかりを展示する。ご主人とともに料理店を経営する高岡さんは40歳をすぎてから書をはじめ、内山雨海さんに入門、めきめき腕をあげられた。

 最初の個展は平成8年6月、銀座のサエグサ画廊で開いた。この書展の案内状に作家、中村 真一郎さんが一文を寄せている。中村さんは高岡さんの論文の指導もし、雨星さんのフアンでもあった。「高岡雨星さんが過ぎた時々の思いを書によって今に甦らせてくださるという。面白いこの展覧会、私たちも観て想い出に耽ってみませんか」とある。

 弟子の一人,多賀義昭さんが思い出を記す。「一杯だけと自分に言い聞かせて少しお酒を飲む。筆のすべりが良くなり、自分でも感心するような書に出来あがる。これを先生の前に広げると『あら、どうしたの、全然いつものと違うわ』と全部ボツになる。私がいくら見てもいつもと同じか少し良いかに見える。どうして僅かのお酒が入っていると分かるのか、聞こう聞こうと思いながら聞き損じてしまった」(追悼集「悼」より)

 会場に飾られた「海鳴」は私が協力出品したもの。案内状にも印刷された。スポニチの社長時代には社長室入り口の壁に、今は銀座の私の事務所の机のそばの壁に掲げられてある。格調たかく、バランスのとれたこの書から静かで穏やかであるが,秘めた熱いエネルギーを感ずる。絶筆となった「群青乃海」はすばらしい。深く果てしなくひろがるロマンがある。そのロマンを追ってみたいと思うのは私一人だけではあるまい。

(柳 路夫)

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