2000年(平成12年)3月10日号

No.101

銀座一丁目新聞

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茶説

ウイルス テロに備えよ

牧念人 悠々

 大阪で中学時代の会合があり、出席した.阪大名誉教授(元日本ウイルス学会会長)加藤四郎君から驚くべき話を聞いた。

 元ソ連の生物兵器製造組織の責任者の一人で、1992年米国に亡命したケン・アリベックによると、「ソ連では1972年の生物毒素兵器禁止条約に調印後も生物兵器の研究と製造が精力的につづけられて、特に天然痘ウイルスは最も破壊効果の高い兵器として数10トンに及ぶ製造がなされ、使用可能な状態にあった。ソ連がロシアに移行するにあたって多くの技術者がウイルスを持って中近東やアジアのいくつかの国にうつった。兵士に種痘を受けさせている国もあるそうだ。

 また、天然痘ウイルスが同時に多数の都市に散布された場合の混乱と被害はサリンの散布や東海村の臨界事故の比ではないという。加藤君は昨年6月の学会でこの旨を発表している。

 亡命したアリベックはアメリカ議会で証言しており、本も出版している。日本では二見書房から山本光伸訳「バイオハザード」(1900円)で、でている。「恐るべき生物兵器がひそかに製造され北朝鮮、イラクをはじめ各国に流出した。その内幕を暴いた戦慄の実録」と紹介されている。一部の人々に知られている話のようである。

 天然痘はWHOが1980年根絶を宣言して以来安心していた。それが兵器として復活するとはまったく夢にも思わなかった。

 日本では25歳以下の人たちは種痘の既往がなく、疱瘡ウイルスに対して全く無防備だそうだ。幸いなことに日本で開発した疱瘡ワクチンが世界で最も良いワクチンであるという。学者たちは日本でも生産体制を強化してワクチンの備蓄をはかるべきだと訴えている。

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