2000年(平成12年)3月10日号

No.101

銀座一丁目新聞

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花ある風景(16)

並木 徹

 異色の村長、福島県飯館村菅野典男さんの話を聞く機会があった。

 人口7200人、10年ほど前に比べると、1000人も減っている。菅野さんの持論は「ムラずくりの目的は自分の暮らし方をデザインできる人をつくること」 昭和21年生まれ、酪農出身というこの村長、たしかに変わっている。村政のキワードのひとつが「家族」。なるほど、着想がいい。若者や女性が変わらなければ、夫も変わらない。村政も変わらないし、よくもならない。

 45歳までの女性を「若妻つばさ」と銘打って、2週間のヨーロッパ旅行を企画、実施した。費用は個人負担10万円、後は村持ち。光り輝くパリのエッフェル搭を仰ぎ見てかあちゃんたちは、なにを思ったのか。亭主のことではない。忙しい農業の合間を縫って旅行にだしてくれた姑のことだったという。姑が家族の面倒をみてくれるから安心して旅ができるという感謝の気持ちがわいたという。嫁にきてはじめて姑をありがたく思ったそうだ。5回ほど「若妻つばさ」が行われたが、奥さんたちはたしかに変わった。ひとつは、夫婦喧嘩が前より多くなった。二つ目は夜遊びが多くなった。それは集まりや友達同士の話し合いが多くなったためである。女性が目覚め、自立しはじめたのである。これまでの「助け合い、補っていく」夫婦のあり方から「お互いに生かされて高めあっていく」あり方に変わったのだという。

 小学生は飛行機で村の上空を飛び自分たちのふるさとの美しさをしり、中学生は奈良、京都への修学旅行を止め、船で日本海を航海、東北の良さを味わせる。ひとりでも多くの若者がふるさとに残ってむらうよう努力をしているという。

 この村は劇団「ふるさときゃらばん」が「男のロマン・女の不満」の制作のため泊り込んで取材したところ。以前から夢を持ち、前向きに生きる村である。今後が更に楽しみだ。

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