2000年(平成12年)2月1日号

No.97

銀座一丁目新聞

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コソボ便り(2)

中村 恭一

 これまで特別な機会やレストランでの食事以外ではほとんど縁のなかったローソクがコソボでは必需品です。しばらく家の中でローソクを持ち歩くことに大きな不自由を覚えましたが、今ではバスルームのカーテン越しで揺れるローソクの炎を頼りにシャワーを浴びたり髭を剃ることになかなかの興趣を覚え,停電がなかったりすると、心地よい緊張感がなくなるせいか、物足りなさすらおぼえるのです。

 停電が日常的な町の生活ですから星の美しさといったら、ちよっと表現できません。見上げれば満天に星がきらめいているなどという贅沢が毎晩存分に楽しめるのです。誰にも邪魔されずることなく、一人で何時間でも。もっとも停電中の夜出来ることと言えば、震えながら星空を見上げるか、ローソクの炎に思いをはせながらウイスキーをなめるか、あるいは知人からもらいうけたソニーのラジオでBBCを聞きながら寝入ってしまうぐらいしか選択の余地はないのですが。

 さしあたってはセルビア軍の逆襲はなさそうですが、だからコソボは平穏かというと、残念ながらそではありません.恐らく日本でも伝えられていると思いますが、アルバニア系住民に対する報復攻撃が後をたちません.毎日どこかの町や村で手投げ弾や銃撃でセルビア人が犠牲になっています。もちろんその逆もなくはありませんが,圧倒的にアルバニア系による犯行です.加えて最近はアルバニア系同士による殺傷事件も頻発、更に若いアルバニア人女性をヨーロッパ諸国に売春婦として売り渡すことを目的とした婦女誘拐が発生し始めました。今起きている犯罪のいずれも近代的戦車で防げるものではなく、警察力と犯罪を罰する司法制度が必要なのですが、UNMIKではこの二つが最大の泣き所です。コソボ暫定行政府が求める6000人の警察官に対して安保理が認めたのが4800人、そして実際に各国から派遣されたのが半念年たってやっと1800人。セルビアの治安警察の恐怖から解放されたコソボ(あるいは隣国アルバニアからのマフイア)の確信犯たちには国連警察はまるでおもちゃの兵隊さんに映るのでしょうか.逮捕した凶悪犯容疑者が群集によって警察署から奪還されたり、群集の反撃が怖くて警察官がパトロールカーから出たがらないとうわさされたり、赤と白のツートンカラーのパトカーがコカコーラと揶揄されたりで、国連警察の威信は大きく揺らいでいます。



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