2014年(平成26年)10月20日号

No.624

銀座一丁目新聞

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安全地帯(444)

信濃 太郎


電車の中で置き忘れたもの


 夢を見た。ゴルフの帰り、あわてて電車を降りたのでゴルフバッグを置き忘れてしまった。駅員に伝えようと思ったのだがバッグは宅急便で送ったのに気が付いた。それでも何かを置き忘れたような気がする。何の夢?

 今年は毎日新聞社会部旧友会の春と秋のゴルフ会に出席しただけでゴルフは2回しかしなかった。いずれもスコアは120に近く、恥ずかしい限りであった。来年はゴルフをやめようかどうしようかと迷っている。

 場所はいつも東京江東区にある「若洲ゴルフリンクス」。都心にあるので横浜からも千葉県からも近く集まるには便利である。いつも20人近い人が集まる。東京湾の埋め立て地で3方を海に囲まれ、ディズニーリゾート、東京タワー、発電用の風車塔もみえ周りの景色も悪くない。だが、ここを予約するには一苦労である。いつも幹事・堤哲君と吉沢孝君の二人が予約で殺到してつながりの悪い電話と30分ぐらい格闘して予約を取っている。

 秋の会(9月29日晴天・参加者15人)で一緒にプレーした友人の松尾康二君は「ゴルフは楽しむものです。日本だけです。スコアを気にするのは・・・アメリカ人はそんなに気にせずみんな楽しんでいますよ」とスコアを気にする私を慰めてくれた。ゴルフを終わった後の懇親会もいい。大いに話が弾む。寺田健一君は「書」を楽しんでいるという。そこで私は東京銀座画廊で開かれた「湖心社書展」の話をして寺田君の書をほめた。この書展にはこの日、ゴルフで優勝した高尾義彦君も出品していた。書展の事は『銀座一丁目新聞』にも紹介したのだが、高尾君から「あの文字の説明が間違っていましたよ」と手紙で知らせてきた。私は次のように書いた。『蘇軾詩春夜抄とある。「春宵一刻値千金」からとった書である。値の字を分離して「直」の左に「有清香」。「イ」の左に「有陰」を配す(「花に清香有り月に陰有り」)。 なかなかしゃれた構図である(35x69)。野球で言えば直球よりも変化球好みである』

 ところが「値」ではなくて「花」の文字だというのである。私の見間違いであった。ここに訂正しておく。

 ここで気が付いた。ゴルフでも大事なものは人と人との付き合いだということだ。あと幾ばくも無い人生のひとときを毎日新聞社会部の戦友たちと付き合うのは無上の幸せではないか。スコアなど気にするのはおかしい。電車の中の忘れ物はバッグではなく、ゴルフを楽しむことを忘れた己の心の貧しさであった。夢も時によいメッセージを出してくれる。