1998年(平成10年)10月1日(旬刊)

No.53

銀座一丁目新聞

 

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黒を野暮ったく着ないでヨ

山崎れいみ

 黒が流行っている。それも生半可な流行なんてもんじゃない。

 初秋の風も感じられる週末、例によって例のごとく渋谷は原宿あたりへ行ってみたら、なんと「黒いドレスの女」オンパレードだったのである。もちろんユニホームではない。その証拠にそれぞれデザインの違う洋服で、つまり素材の色がオール黒なのだ。しかし、よーく見なければデザインの違いまでは分かりにくく、ただ黒の軍団が闊歩しているといった風景。これがまた目立つのなんのって、私なんぞは行き違うとき一瞬ビビってしまいそうだった。

 黒と言えば地味で目立たない色、喪服の色……、と決めてしまっている節があるが、実はまったく逆、専門家に聞くと色の中で最も目立つ色が黒なのだという。それが群れをなしているのだからギョッとなるのは当然のことなのかも知れない。

 昔から、黒を着こなすのは難しいと言われたものだ。オシャレなパリジャンヌは黒の扱いがうまく、黒の洋服をとてもシックに自分のものにしている、などといわれ、粋でおしゃれな女は黒がよく似合うとされていた。が、この伝でいけば粋でオシャレなはずの「原宿の黒い女の群れ」が、どうひいき目に見ても粋でオシャレとはほど遠い。それより逆にダサイ感じだから困ったものである。

 当方の偏見ではと、服飾評論家に取材したら、

 「黒色が流行っていることは事実、デパートの婦人服売場には黒だけのコーナーもあるくらいですが、黒を上手に着こなしてるかとなると私も首をかしげます。かえってヤボったくなっちやってる人のほうが多い。若い人は特にそう。目立つ色だけに気になります。もう少しおしゃれの勉強をしてから黒の挑戦して欲しいですネ」。

 同感! なのでさらに言わせてもらえば、黒い洋服に白いゴミ、糸くずなんぞが付いていると、これはもう粋だのオシャレだのとは縁がないってものだ。黒い服のときはせめて小さい洋服ブラシを持参するくらいの気遣いをッ!

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